-- アメジスト2 --

煙草を持つ女性の左手に、紫色の石のついた銀の指輪が鈍い光を放っている。二月生まれか、と彼は思う。妻もアメジストの指輪をすることがあった。誕生日に彼が贈ったものだ。これを身につけていると、かならずいいことがある、お守りなんだから長生きできるかもしれない、百歳まで生きられそうよ、と妻は根拠もなしによくそう言っていた。(堀江敏幸『雪沼とその周辺』)