-- 硬石膏 --

「お客さん、ラジオの鉱石(クリスタル)はいりませんか。銀燭堂の上等品がございますよ。ほら、ひとつずつ箱に入っていて、手土産にもピッタリだ。」紺野先生のラジオは真空管で検波する装置だったので、鉱石は不要だった。「すまないが。このとおりのラジオでね。」「それなら、さきほどの発泡水に沈めてご覧なさい。そりゃ、稀な味わいになること請け合いだ。(長野まゆみ『夏帽子』)