-- エンジェライト--

しかし、絶対に行けない場所について想像してみることは一種の特権のようにさえ思われる。この都会のずっと西の方に大きな島に山が一つある、その下には縦横に坑道が走っていて、それはところどころ崩れ、なかば水没し、水の滴る音と地鳴りが昼夜の区別も季節の区別もなく続いている。完全な暗黒、節のない時間の流れ、一片の黄銅鉱と化した自分、それを想像すると心が安らぐ。(池澤夏樹)