-- 十字石 --

水蓮は掌の十字石をじっと見つめた。黒密のような濃い色をしている。結晶は一方が斜めに貫入(クロス)した不完全な十字だ。「南十字星だな。少し傾いている。銅貨のは、」「これも、斜だ。水蓮のより少し大きいから偽十字星(フォールクロス)ってところか。困惑しながら微笑んだ銅貨と水蓮は、そこがちょうど探していた扉の前であることに気づいた。(長野まゆみ『天体議会』)