-- 桜石 --

少年に許しを得て手に取ると、それは乾いた感触の石で、しかも断面にくっきりと櫻の花びらの模様が刻まれている。花は淡白く、ほんのりと光沢があった。少年は石を樹の下に埋め、満足したように櫻の天蓋を出ていった。後になって、その石は土地の人が櫻石と呼ぶ、六角状の結晶であることを知った。櫻の花は白雲母でできている。(長野まゆみ『遊覧旅行』)