5月1日

今日はキルシェのライヴのために初台ドアーズまで出かけてきました。キルシェのライヴははじめてです。今日は友達と一緒でした。私はだいたい演劇もライヴも一人で出かけるさみしい人なので、友達と一緒なのはうれしかったです。みとせさんはなんとなくか細い声なのかと勝手に思っていたのだけれど、全然違って高いけどとても迫力のある声量。伸びやかに歌われていて気持ちよかったです。サポートの方々とも和気あいあいとしていましたね。楽しいライヴでした。ご一緒した方は上野洋子さんがヴォーカル時のzabadakのライヴに通っていたそうで、うらやましい限りです。


5月3日

1日は疲れた状態で日記を書いたので、まるで言葉が足りていない。いつも一眠りして起きたら書き足そうと思うのだけど、いざ朝になってみると洪水の後のように何もかもが洗い流されて、私の中にあるのは空白ばかり。いったい幾つもの言葉を夢の淵に落としてきているのだろう。

最近の読了本。『マルドゥック・スクランブル 燃焼』。カジノのシーンがあまりにも長すぎやしませんか?楽園のところは結構楽しめたのに、カジノのところで一気にがくーっとテンションが下がってしまった。カジノのことはあまりわからないし、あそこは詳しい人は楽しめる部分なのかなとは思うけど私にはつらかった。


5月4日

現在『ロシア・ソビエトSF傑作集』の上巻を読んでいる。最近妙にSF関連の本を手に取っているような気がする。プチSFブーム?ロイズの生チョコをつまみながら、今日ものんびり読書。


5月5日

連休中はずっと巣ごもり状態。しかも最終日の夜になってからぴあを取り出し展覧会チェックをはじめるという、どうしようもないことをやったりしていた。学生だから連休のありがたみがないのだと思う。気になる展覧会がいくつかあるので、そのうち平日にでも出かけるつもり。人が多いと外出する気にならないという自分の性格は本当にどうにかしたい。今日は本屋をのぞいて新刊文庫を二冊購入。ダンセイニの『世界の涯の物語』、ヴァレリーの『ムッシュー・テスト』。


5月6日

ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』(岩波文庫)を読了。ヴァレリーは昔から好き。いつかカイエを読みたい。音楽ばかり聴いていて、読書が思うようにはかどらない今日この頃。


5月7日

楠本まきの『Kの葬列』を読んだり、萩原朔太郎の詩集をぱらぱら読み返したり。邪道と思いつつ輸入ものの香料入り珈琲を買ったら案の定まずかった。失敗。名前に惹かれて「おいしいかも」と騙された自分が恨めしい。


5月8日

今日は野口里佳の写真展「飛ぶ夢を見た」を見るために原美術館へ。野口里佳の写真ははじめて見た時から忘れられなくて、写真展があるとこうしていそいそと出かけてしまう。今回の「飛ぶ夢を見た」も非常によかった。もう少しまとまった感想は明日にでも(明日にでもといって流されることが多いけど、今回は必ず)。展覧会のカタログなのか新しい写真集なのか、「この星」という本を購入した。部屋で写真集を見返しては、余韻に浸っている。7月まで開催されているので、終わり頃にもう一度出かけようと思っている。


5月9日

萩原朔太郎の詩集を読み終わった後は大手拓次の詩集へ。久しぶりに私の中で詩がリバイバル。「飛ぶ夢を見た」の感想はメモをとったけど、実際に文章にまとめるのは難しい。最近文章を書く訓練を怠っていたのが実感できる。意識的にアウトプットの訓練をしないと、すぐこうなる。私は基本的に文章を書くのが苦手なのだ。


5月10日

展覧会全体の感想がまとまりそうにないので、タイトルになっている「飛ぶ夢を見た」の写真の個人的メモのみアップします。もう一度見に行くので、その時はちゃんとテキストとして残せたらいいな。最近日記が異様に短いのがおわかりかと思いますが、実は現在文章がまるっきり書けない状況です。ああ、つらい。自分の中がどろどろに淀んでいくみたい。日記であれ何であれ、書くのは一種の浄化行為になるのですが、それがきちんと機能しないのは苦しいです。えっと、そういうわけでメールも遅れています。これはいつもか…。本当にすみません。

「飛ぶ夢を見た」
写真を見た瞬間、なんてきれいなんだろうと思った。雲一つない真っ青な空のもと、白いロケットが彼方へと吸い込まれていく。上昇する力強さと対照に粉のように消えてしまいそうな不思議なロケットの佇まいがとても印象に残る写真だった。カタログに目を通していて、それが本物のロケットではなく実際に野口里佳自らが製作して打ち上げた紙製のロケットを撮影したものだと知った。私は最初そんなことを知らなくて、てっきり本物のロケットを超望遠レンズで撮影したものだと思っていた。実際は巨大で金属の塊であるロケットもこうして地上から見るとまるで玩具で、夢のように儚く見える。そんな瞬間を切り取った写真なのだと思っていた。私の第一印象が「まるで粉になって消えてしまいそう」だったのだが、まさか本当に手作りのロケットだったとは。「飛ぶ夢を見た」はシンプルで、それでいてタイトル通り何やら人を夢みさせる印象的な作品である。家に帰ってきて「この星」に収録されている写真を見直しているが、残念ながらこの印刷ではあの抜けるような青色、開放感は感じられない。だがこうして改めて写真を見ると、ロケットに対して妙な愛おしさを感じる。飛ぶ夢を見たのは実際に宇宙へ飛び出すことはできない、紙のロケットだろうか。それともその光景をカメラに写し撮った野口里佳だろうか。写真の前で立ち去りがたくいつまでも見つめていた私自身もその瞬間、確かに飛ぶ夢を見ていた。


5月11日

石鹸作りのために購入したエッセンシャルオイルがいつの間にか随分たまってしまいました。日本のお店で買うと馬鹿みたいに高いので海外から購入しているのですが、そうするとまとめ買いした方が得なのでつい多めに買ってしまいます。これだけ揃っているのに石鹸にしか使わないのはもったいなと最近簡単なアロマテラピーなどにも挑戦しています。基本的にめんどくさがりなので粗塩にオイルをたらしてバスソルトを作るとかそんな程度ですが、これがよい気分転換になります。最近イライラしていることが多いから、アロマなどで気を紛らわせるのはよいかもしれません。今は完全に自己流なのですが、そのうち一冊アロマの入門書でも買ってみようかなと思っています。現在はバスソルト・バスオイル程度しかやっていませんが、もう少し本格的なものも作ってみたいです。アロマをやりたがっているのは私の中の女の子の部分じゃなくて、完全に少年属性の部分です。調合とかが理化学実験っぽくて、それが楽しいのだろうなと思います。これは石鹸作りも然り。だからマッサージオイルを作っても調合するだけで満足してしまって、全然使っていません。美容とかそっちの少女属性は私には欠落しているようです。

ジェイン・ヨーレン『夢織り女』(ハヤカワ文庫)を読了。妖精物語の短編集ということで読んでみたのだけど、私が苦手なタイプの話しでした。目次を見た感じでは好きそうだったのにな。残念。「月の子」と「人魚に恋した乙女」のラストはわりと好き。これはちょっとハズレ本だったので、次こそはとダンセイニの『世界の涯の物語』を読み出しました。ダンセイニは素晴らしい。この短編集は大切に読むつもりです。


5月12日

Plastic Treeを好きになったことがきっかけとなり、少しずつヴィジュアル系の音楽を聴くようになりました。しかし私は耽美や猟奇にはあまり興味がないので、V系といっても琴線に触れたのはcali≠gariとか人格ラヂオとか、どうも微妙なバンドばかり。プラもそうなんだけど、華麗な衣装を着て耽美な曲を歌うという人たちではないのですよね。cali≠gariは「ブルーフィルム」を探しているのだけど、CDが見つからない。「ミルクセヰキ」や「ポラロイド遊戯 」「真空回廊」などと曲名が好みだし、きっと気に入るアルバムだと思うのにインディレーベルで品切れじゃなあ(ちなみにこのアルバムはエロらしいですよ。何せ一曲目から「エロトピア」ですから)。地道に探していくしかないか…。これを書いている今、部屋では人格ラヂオの「お人形さん」がエンドレスで流れています。この曲はすごく好き。「お人形さん」は人格ライブの名物で、ボーカルの悠希さんが歌いながら人形で観客をマジ殴りし、しまいにはステージと客の間で人形をドッジボールのように投げ付けあうという大変な曲だそうです。これを聞くと見たいような見たくないような気持ちになりますが、機会があればライブに出かけてしまいそう。スーツに腕章で人形を振り回すメンバー、やっぱり見てみたいもの。曲も生で聴いてみたいもの。


5月13日

ロード・ダンセイニ『世界の涯の物語』(河出文庫)を読了。ああもう、ため息。どの短編も素晴らしい。私は特に「驚異の書」に収められている短編が好き。私は基本的に長編大好き人間で短編にはさほど興味を示さない人なのですが、ダンセイニの短編にはすっかりやられています。『エルフランドの女王』『ペガーナの神々』そしてこの『世界の涯の物語』とどんどん宝物が増えていくのが幸せ。次の『夢見る人の物語』も期待度大ですわ。これも出たらすぐに買わなければ。そうそう、ずっと探していたブローティガンの『ハンバーガー殺人事件』をそれなりの価格で見つけたので注文してしまいました。これは図書館で読んだのだけど手もとに置いておきたくて探していた一冊です。ふふふ、届くのが楽しみ。次なるブローティガンの探究本は『芝生の復讐』です。本当は詩集『ピル対スプリングヒル鉱山事故』も欲しいのだけど、これはさすがに無理かも。自分の中で詩集ブームが復活しているので、そのうち池澤夏樹が訳した『チャイナタウンからの葉書』を読み直すことにします。


5月15日

上野のアメ横にオイル等手作り石鹸の材料がとても安くて豊富なお店があるとのことで偵察に行ったのですが、本当に安くてしかも種類が豊富でした。おお、素晴らしい。近所でよかった〜と思いつつさっそくココアバターやらつばき油、ひまし油を買ってきました。このお店に通うようになったらますます石鹸熱が高まりそうで怖い。最初に作った100パーセントオリーブオイルの石鹸は4週間経ったので解禁にしてみました。泡立ちは少なくてトロリとしていますが、優しくしっとりした使い心地がよいです。エッセンシャルオイルを入れなくても自然ないい香りがします。一応6週間熟成させた方がよいそうなので、6月になるまで待ってから実家の三女にでも少し送りつけようかと思っています。最近またせっせせっせと仕込んでいるので、夏頃にはたくさん熟成した石鹸が出来上がることになります。こんなにどうしよう。手作り石鹸は市販のものより溶けやすいからなくなるのが早いけど、それにしたってこれはいくらなんでも持て余す量です。作り過ぎはよくないとわかっているのだけど、面白いのでやめられそうにありません。

イタロ・カルヴィーノ『宿命の交わる城』(河出文庫)
素晴らしい作品。最初にタロットカードありきなのですが、こんなに素晴らしい物語が織り上げられるなんて。この世界の骨組みとなっているタロットについてもっと知識があればさらに楽しめたのだろうと思うと残念。タロットをはじめ占い方面はとても疎いのです。それにしても最近の河出文庫、がんばってるな。

タロットの織り成す絵模様から浮かび上がる物語。カードで構築された世界。幾通りもの姿を見せ、人を惑わし続ける。作者さえも、このカードの中に組み込まれている。人は何によって動かされているのか。私の背後には、何か大きな機械があるのではないか?私はその小さな歯車の一つなのではないか?この世界の後ろには何があるのだろう。世界の果ての向こうには、事象の地平線の向こうには。私は見たい、見たくない、そんなものは見たくない、でもやっぱり見てみたい。向こう側はいつも、暗い掌をひらひらさせて、私を呼んでいる。でもきっと、私はそこへはたどり着けない。この世界の中でときたま夢を見るだけで、何事もないような涼しい仮面をかぶって、自分を欺いて生きていくことだろう。

 

 

 

 

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