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★4月1日★ ★渡辺保『女形の運命』(岩波現代文庫)を読了。まぎれもない名著。この本を買ったきっかけは札幌の弘南堂書店でたまたま安く見つけたことだったのだが、あの時に買っておいてよかったと思う。歌舞伎初心者の私は、この本の中身が決して理解できているわけではない。それでもすごい本だということはわかる。一番面白かったのは第III章の「八ツ橋の笑い」と「笑いを喪った肉体ー半四郎の部屋」だった。細かい内容は追いきれない部分があったものの、その着眼点と論述がぞくぞくするほど面白い。この本は単なる歌舞伎論に留まらず、批評という形式においても私に非常に感銘を与えた本でもある。このような形で批評を行うことが可能なのか。いろいろな意味で影響を受けそうな一冊。 ちなみに今後の歌舞伎の予定だが、5月の歌舞伎座と6月のコクーン歌舞伎に行く予定。どちらも一等席なので、二つ合わせるとチケ代がものすごいことに。。歌舞伎、高いよ…。今年はバレエ強化年宣言をしたわりには全然行けていないのは、明かに歌舞伎のせいである。面白いから行くけど。でもバレエにも行きたいな。特にグルジア国立バレエ。 ★4月2日★ ★塚原史『ダダ・シュルレアリスムの時代』(ちくま学芸文庫)を読了。久しぶりにこのあたりの本を読みたくて買ったのだが、内容が微妙に自分の関心とずれていたこと、またメンタルがグダグダで不調なため途中で読む気を失って最後の方は流し読みに。狂騒の3月が過ぎて、ようやく春の憂鬱が訪れたのかも。春はいつも、しばし心が病む気がする。これはもう、ほとんど通過儀礼だ。 ★4月3日★ ★山田登世子『モードの帝国』(ちくま学芸文庫)を読了。ファッション関連の文献を読みたいと思って手に取ったのだが、ファッションというよりは女と女をめぐるエロティシズム論がメインの内容だった。これはこれで面白いけど、今はバリバリ服飾史的な内容の本を読みたい気分だったんだよなぁ。そういう意味では通史的・ファッション史的な視点を含んでいる「ファッション/誘惑ゲーム」とシャネルを論じた「惑乱しに、とモードは言う」あたりはよかったかも。最近あまり本を読んでいなかったから、本をセレクトするという感覚が鈍っているのを感じる。昔はもっとピッと、その時自分が欲しているタイプの本を直感的に選ぶことができた。常日頃本と接している頃は気付かなかったけれど、これも日々鍛えそして研ぎすませていた感覚があったからこそ実践できていたことなのか。さらに言えば、こうして日記を書くことも最近はまともに行っていなかったので、本を読みその感想ないしは覚え書きを文章として構築するということにも困難を覚えている。やれやれ。しばらくはリハビリ期間ですね。 ★4月8日★ ★またまた日記が止まってしまいました…。無理をしすぎた3月の反動なのか、体がだるくてだるくておまけにものすごく疲れやすくて困っています。毎日毎日あまりにフラフラしていて、友達にまで心配される始末。うーん、やっぱり先月は頑張りすぎたのかしら。体が休養を欲しがっているサインなのでしょうから、しばらくは無理をせずに体力回復につとめたいと思っています。 ★世田谷文学館で開催されていたムットーニの展覧会に行ってきました。やっぱりムットーニのからくりシアターは大好き。カタログはもちろん、世田谷文学館限定という切手シートも購入して満足満足。こちらのレポはしっかり残しておきたいので、数日中にアップしたいと思っています。 ★この週末は何をしていたかというと、私がスタッフとして参加している音楽と天文を融合させたクラブインベント「サイエンスクラブ」のHP作りをやっていました。数日中にHPが正式オープンになるかと思います。ゲストがすごく豪華なんですよ〜。オープンしましたらまた改めてこちらでも告知いたします。 今回はイベントのコンセプトも宇宙と関わりがあるということで、私の十八番とも言える宇宙系のデザインでまとめてみました。ものすごく短時間で作ったのでそういう意味ではもうちょっと頑張れたはずと思う部分はあるのだけれど、全体的な雰囲気としてはそれなりには満足しています。と書きつつ実はこのデザインは決定案ではないのですが…。でも多少手直しはするにせよ使う可能性は高そうなので大丈夫かな。作業をしつつ、改めて自分はHP作りが好きなんだなと実感。更新が止まっているこのNEW ATLANTISも、ゴールデンウィークの間にはいろいろと作業をしようと思っています。 そうそう、3月は修羅場だから日記には書きそびれてしまったのですが、3月20日はサイトの開設記念日でした。2000年に立ち上げたから、7周年記念。現在8年目に突入中です。それなりに長い時間が経ちましたね。この7年の間にいろいろなことがありましたけど、2007年ほど自分にとっては区切りとなる年はなうような気がします。まずは念願だった修士課程を修了できたこと、ようやく「学校」という社会に戻ることができたこと、現実世界での人間関係をきちんと構築することができるようになったこと。ずっとずっと私がやりたかったことが2006年の秋以降ようやく歯車がかみ合うようになり、現実生活が楽しくなりました。以前ほど、私はネットの幻影を求めていないのかもしれない。それは自分でも強く感じている。でも、こちらも私がずっと昔から愛している世界。自分の暗い影をぽとりぽとりと落とす箱庭、もしくは無限増殖する幻影の伽藍。イメージと言葉で形成されたこの内宇宙。いつ頃からだったか、ネットの言葉を通じて幻想を抱かれるのが鬱陶しくなってしまい、日記も以前とはスタイルを変え、きれいな言葉を綴ることは滅多になくなった。だから私のサイトは以前ほどはきれいではないと思う。煌めく鉱物質の幻影は、今はもうここにはない。でも、今はこれでいいのだと思う。また気持ちが変わればスタイルを変えるだろう。そういえば、先日ヴェルヌ研究会で私がHPを作るきっかけとなったある方とお会いする機会に恵まれた。知り合ってから8年目にしての、初めての現実世界での出会いだった。それもなんだか区切りであるこの年にふさわしい出来事のような気がして、とてもうれしい。HPを運営することは、どこへ辿りつくのかもわからない航海のようなものかもしれない。舵を握っている私はとても気まぐれで、空の色や風の音ですぐに行き先を変えてしまう。そんな海図に沿わない冒険を、私はとても楽しんでいる。 ★4月9日★ ★4月8日の日記。谷中小学校で選挙の投票を済ませた後、久しぶりに千駄木をブラブラ。好きな喫茶店ペチコートレーンの前を通り過ぎると、何やら見慣れない看板が。そこには「不思議(はてな)」とあり、古本と古道具のお店だという。一体いつの間にこんなお店ができたのかしら…と思いつつ階段を上がり店内に入ってみると(3月24日にオープンしたてほやほやだそう)、そこには素晴らしい世界が。古道具も取り扱っており決して古本専門の書店というわけではないけれど、本棚がとても刺激的。昭和そしてサブカルもおさえつつ、文学やアートの本も多数セレクトしてある。どの棚も面白く好みで、興奮しながら物色をする。買い上げた本は以上の5冊。鴨沢裕仁『クシー君のピカビアな夜』(青林堂)、『北村想大全★刺激』(而立書房)、辻邦生『ユリアと魔法の都』(筑摩書房)、シェーアバルト『小遊星物語』(桃源社)、マンディアルク『レオノール・フィニーの仮面』(奢覇都館)。開店記念ということで、びっくりするほど良心的な価格をつけていただきました。正直この5冊をあわせた金額は、市場での『レオノール・フィニーの仮面』の取引価格よりもずっと安いような…。美本の『レオノール・フィニーの仮面』をこんな値段で買ってしまっていいのかしらと若干申し訳なく思いつつも、とてもうれしい。ここの棚はとても好みなので、これからも頻繁に通おうと思っています。今日の日記では古本にしか触れませんでしたが、取り扱っている古道具もよかったです。谷根千はやっぱりいいなぁ。ここに住んでいてよかったと、心から思っています。 購入した本について若干のコメントを。シェーアバルトの『小遊星物語』は平凡社ライブラリー版を買おうかと思っていたけど、ご縁があったので最初に邦訳された時の桃源社版を購入した。昔古本屋でバイトをしていた頃、桃源社の本を集めかけたことがあったのだが、この頃の本は他の出版社から再販されているしまたコテコテの幻想文学派というわけではないので桃源社本に対する思い入れもさほどなく、結局手元に残っている本はほとんどない。久しぶりに手にした桃源社の本、そしてカバーに記されている「世界異端の文学」という文字を見ると甘酸っぱい気持ちになる。これを読んでから、もう一度ブルーノ・タウト展に行かなければ。 『レオノール・フィニーの仮面』は、2005年にBunkamuraで開催されたレオノール・フィニ展を見て以来ずっと買おうと思って探していた本。フィニが仮面を被った写真が多数収録されているのもうれしい。彼女の作る仮面は、いろいろな意味でグロテスクだと思う。素顔を隠すためというよりは、自らを飾り立て他者を誘惑する、そんな女の仮面。これは本を読む前に写真をぱらぱらと見た、私の印象記。明日にでもマンディアルクの文を読んでみることにしましょう。 不思議(はてな)は4月29日に開催される一箱古本市にも出店されるとのこと。このイベントも、とても楽しみです。 ★4月11日★ ★3月は忙しかったが、4月もなんだかんだと忙しい。ただ3月は毎日用事で出歩いていて家には寝に帰るような生活だったのに比べて、4月は家にいるけどいろいろとやらなければいけないことが多くて作業に追われているという感じ。でもまぁ、体力的には今の方が断然楽。とはいえ、これから夜行バスでの仙台遠征が入るわけですが。忙しくて、全然準備してないや…。。どうしよう。 ★最近、なんとなくまたスザンヌ・ヴェガを聴いている。彼女は曲、そして知的で社会的な歌詞はもちろんだが、声がとても好きだ。透明感はありつつもドライなその声は、対象を突き放す冷たさ、そうしながらも包み込む優しさのあやういバランスを体現しているように思う。本当に彼女の声は好みだ。か細い少女のイノセントなソプラノよりも、大人の女性のやや硬直さが残ったこういう乾いた歌声が実は一番好き。彼女の曲で一番有名なのは「ルカ」だろうが、他にもいい曲は山ほどある。最近よく聴いているのは「left of center」「In Liverpool」「The Queen And The Soldier」「Rosemary」などなど。全部ベストアルバム『Tried And True』に収録されている(このアルバムが入門者には一番おすすめか)。私はスザンヌ・ヴェガの大ファンではあるが、彼女が創●と知った時はショックだったなぁ。。別に知ったところでファンをやめたりはしませんけど、最初は「え、学会員?」と絶句しましたわ。 ★三浦雅士『バレエ入門』(新書館)を読了。バレエを鑑賞したい人向けの本で、そういう意味では私にぴったりだった。一口にバレエ入門といっても、踊りたいのか、または観たいのかは大きな違いである。三浦雅士って『ユリイカ』編集長というイメージが私の中で強いのですが(これも大昔の話しだからなんでこういうイメージを持っているのかが不明なんだけど)、今は『ダンスマガジン』の編集長をされているのですね。ああ、バレエに行きたい、行きたい。ダメなら、せめて映像でも観たいなと思う。TSUTAYAには置いてあるのかしら。今度探してみることにしましょう。 ★4月14日★ ★Plastic
Tree 10th Anniversary time capsule under the tree[on the hill] ツアー初日のチッタ川崎に行ってきました。Plastic Treeが好きな人、いえ、Plastic Treeが好きだった人こそ行くべきツアーかもしれません。セトリを見れば一目瞭然。さながら1999年から2000年頃のセトリかと思うほど、『Parade』以前の曲ばかりです。10周年記念だから、きっと昔の曲をたくさんやってくれると思っていました。でもこれは予想以上。ここまでいい意味で偏ったセトリを作ってくれるとは思いませんでした。枯れない樹がそびえ立つのは絶望の丘。ここで行われているのは往年のPlastic Treeの再現ではないけれど、見たくてたまらなかったあの時代がこうして姿を現したことが、ごく最近のプラしか知らない私にはたまらなくうれしいのです。なるほど、これは確かにタイムカプセルですね。初日のざっくりしたレポは明日アップします。さすがに今日は疲れた。。 この記念すべきツアーの初日、私は珍しく前に突っ込み暴れていました。普段はよくて真ん中、大半は後ろから数列目という場所でステージを眺めている人でありましたが、今回はなんとなく前にいないといけないような気がして5列目くらいで待機。ライブが始まったらだんだん押されたり人が抜けたりして、気がついたら中盤以降は2列目にいました。こんなにステージが近いのは久しぶり。それもあって、すごく楽しかったです。汗でドロドロになりながら、後ろからの押しでもみくちゃにされながら見るライブもこれはこれで楽しいのですよね。あと私のアイドル正君(笑)が見放題だったのもうれしかった。正君、白くて細くて金髪でゴスメイクが似合って(ちょっと骸骨っぽい雰囲気がありますよね)、ぴょんぴょん飛んだりヘドバンしながら長谷川みどりちゃん(緑のベース)を弾いていて、ああこの人は永遠にパンク少年だなと思いました。ファッションも一貫していますよね。御年36歳のスーパーリーダーのかっこよさを再確認しました。正さんに限らず他のメンバーもですけど。アキラさんは超美人さんだし(なんであんなに写真写り悪いんだか)、ぶっち君は男前だし、太朗さんはゴスメイクばっちりでフォトジェニックなくせして実際はゴツくてガタイがいいという一番男らしい人だし。久しぶりの前を堪能した一日でした。これからも元気な時はたまにこうして突っ込むか。いや、今回も本当は元気じゃなかったけどさ。それでもあの熱気と押しに耐えられるんだから、たぶんメンタルの問題なんでしょうね。 今回のライブではVJがなかなか効果的に使われていました。まず最初のオープニングがいいし、あとは途中で差し挟まれるメンバーの写真がいい。Puppet showやトレモロの頃に近い雰囲気ですね。パンフの写真なのかなぁと思いつつ物販を見たところ果たしてそうだったので、久しぶりにパンフを買いました。太朗さん、シルクハット被ってアコーディオン抱えているし。懐かしいヴィジュアルだこと。相変わらずはまりまくりです。正さんの眼鏡もたまりません。というわけで無駄にでっかいパンフではありますが、プラのこういう雰囲気がお好きな方は買いアイテムかと。本当はグッズは仙台で買おうかと思っていましたが、大きさを見てこれを旅行中抱えて持ち歩くのは嫌だ思って川崎で買ってしまいました。でも買ったはいいけど、A3サイズは本当に収納に困る…。 ★4月16日★ ★夜行バスに乗るまで一時間ほど時間があるので、先日の川崎のメモを忘れないうちにアップ。 オープニングはVJ。メンバーの写真(パンフで使われているあのシリーズ)、リリースしたCD、ツアースケジュールなどが映し出される。時計の針がぐるぐると巻き戻る。10年分のPlastic Treeの足取りを見せつつ、時は今から過去へと戻る。2007年から、1997年へと。このVJが過去へと向かうこのツアーのコンセプトを端的に表わしていたと思うし、いい出来だった。VJを見ていて、「トレモロ」のPVで使われていた時計を思い出す。昔のPlastic Treeを思い出す。タイムカプセルが開いたところで、ライブはスタート。 大歓声の中、メンバーが楽器を構える。聞こえてきたイントロは「水葬。」。昔は水葬。始まりのライブが多かったらしく、この曲での幕開けは感慨深い。透明でなおかつ淀んでいるという、昔のPlastic Treeの持ち味が発揮されたこの曲はすごく好き。以前FCイベで水葬。始まりを一度体験したことがあったけど、あれはすごく気持ちよかった。今回のもいいな。ゆっくりゆっくり沈んでいく感覚がたまらない。下手の前にいて正さんを見つめつつ、アキラギターの音が気になって仕方ない私。アキラさんのソロがすごくよかった。 水葬。はほとんどアキラギターしか聴いていなかった気がする。 そして次は「May Day」。「メイ、デイ!」と叫びながらぴょんぴょん跳ねてみる。前の方だから押しがすごいし、そういう中でもみくちゃにされながらステージに向かって手を伸ばしているのが楽しい。久しぶりの前でなんか必死になっていたから、May Dayの演奏自体はあまり頭に残っていない。結構久しぶりにやった曲だったかな。めちゃめちゃ盛り上がってました。 激しいノリのまま「クローゼットチャイルド」。これはベース好きのための曲です!というわけでひたすら正さんのベースを見るが、ちょっといつもよりゴリゴリが足りないような?気のせいか?せっかくベースが映える曲なのに、だいぶ物足りない感じでその点は残念だったけど目の前で正さんが弾いているだけでいいやという気分になっていました。正さん最初は眼鏡だったけど、いつの間にか(わりと最初の方で)はずしてました。 次は「トランスオレンジ」。聴くのは二度目くらいかな。久しぶりに聴いたけど、今日の演奏はなんだか自分の心にぴったりはまった感じですごくいいなと思いました。トランスオレンジってものすごくネガティブな歌詞なのに、メロディーが超ポップという摩訶不思議な曲でこの絶妙なバランスがたまらないわけですが、今日の演奏もいつも以上にポップだったんです。それがなんだか、妙によかった。あとキーが全体的に高めだから、太朗さんが頑張って出す高音を存分に聴けるし。トゥルル〜と歌うところも好き。太朗さんの高音、すごく好みなのです。というわけで、ポップで明るいメロディーと演奏を楽しみつつ、「僕の居場所 嘘だったみたいに なくなった 誰からも嫌われた僕が いつも いつまでもオレンジ色の世界でつぶやくんだ」という歌詞をニコニコしながら聴く。透明で、絵本みたいにかわいく不思議な世界で、その中に憂鬱な自己嫌悪が溶かし込まれていて…。ものすごく明るいんだけどどこか捩じれている。今日のトランスオレンジ、とてもよかったです。 そして「スノーフラワー」。『Hide and Seek』の曲ばかりじゃないか、これは本格的に初期曲ばかりをやる気なのかもとようやくこの時点でセトリのすごさに気付きはじめる。スクリーンには雪の映像が映し出される。イントロのぶっち君のドラムが躍動感があって、非常にいい。彼のこういうドラムが好き。重みがある音というか、リズムというか。スノーフラワーって実はドラム曲だなぁと思いつつ聞き惚れる。熱気がこもっていた会場をクールダウンしてくれた曲で、気持ちよかったです。それにしてもスノーフラワーも不思議な曲。何度聴いても、曲のイメージが自分の中で形成されずに漠然とした色が頭の中を流れる。初期曲をまとめて聴いて改めて思うのは、昔のPlastic Treeは透明水彩のような音だったな、と。なんというか、ヴィジュアル系っていろいろな意味で濃いと思うのですよ。でも昔のプラは、そういう濃さがあまりないのです。どろっとしたり濁っていたりはするのだけれど、やっぱり透明水彩。それはすごく希有なことだったと思うし、そういう音は今でもとても好きです。最近の曲では味わえないカラーだから。 ここで最初のMC。話すのは太朗さん。「やぁ。やぁやぁ。Plastic Treeです。」昔の曲をたくさんやっていることについて「懐かしさのあまり感涙しそうです。」10周年ライブだけど特に気合いが入っているということはなく、というよりもむしろいつも以上に抜けている感じの脱力感溢れる声でのMC。ここで気合いバリバリじゃないのがとってもプラらしいと思う(笑)。「やっとこのツアーを迎えることができました。楽しんでいってください(この部分も投げやりに近いくらい脱力声)」。 太朗さんがギターを抱え、演奏を再開。曲は「まひるの月」。これまた透明で儚い、初期カラー溢れた佳作。色彩の透明さと、あとはリズミカルなベースや軽いドラムの音、そしてキラキラしたアキラギターと楽器隊の演奏をまったり楽しむ。この曲って自己嫌悪が好きで文学的歌詞が好きという私ならのめり込みそうな感じなのに、歌詞に感情移入したことって一度もないんですよね。なんでなんだろう。この曲、好きな人多いだろうに。とにかく透明でひたすら儚くて、私がどっぷり浸るにはきれいすぎる曲なのかもしれないなと思う。 次は月繋がり?で「月世界」。待ってましたな一曲。これ、本当にライブ映えするんですよ。去年だったかのFCライブで初めて聴いて、「月世界」すごくいい、今のプラの音でやってもすごくいい、また聴きたいと思っていたからすごくうれしい。最初の時はなんかもー感動していて「とにかくよかった!」という記憶しかなかったけど、今日はもっと冷静に観察できたと思う。改めて聴いてみて、「月世界」ってすごくロックな曲だなーと驚きました。音源だと「Kiss me Kiss me…」やら太朗さんの甘い声にばっかり気を取られてしまうから忘れがちなんだけど、これはロックなんですよね。バックの演奏ががっつり重くて、それにふわふわした太朗さんの歌声が重なる。今のプラがやっても全然おかしくない、むしろすごくいいと思える曲。『トレモロ』という4曲入りのマキシシングルはヴィジュアルを含め当時のPlastic Treeの持ち味を最高に引き出した傑作(トレモロに限らずどの曲も)だと思うのですが、実は「トレモロ」自体は今のプラではあまり似合わない曲となってしまっている。曲はいいんだけど、今のプラの音がどうにもなじまないというか、昔の方がいい、残念ながらそう思わせてしまう曲。一度だけ聴いて、「ああ私の好きなトレモロはもう音源の中にしか存在しないんだ」とまざまざと実感してしまった、そんな曲。私とプラの出会いの曲が『トレモロ』だから、そのことを思うとほんの少し哀しくなることがある。でも、それは仕方のないことなのだと思う。汎用性は高くないのかもしれないけど、あの時のあの音だからこそ輝いた曲だった。そういう立ち位置の曲であり、それが価値を貶めているわけではない。ただ、今となっては難しい、それだけのこと。そんなシングルの中で、今の音で演奏しても変わらずかっこいいのがこの「月世界」だと思う。今のプラの音と、過去の曲の持ち味が合致して素晴らしいものになっている「月世界」。本当にかっこいい。大好き。次に聴くのも楽しみです。 ……ここで時間切れ。続きはまた東京に戻ってきてから。これから仙台に行ってきます。それにしても最高気温6度って。おまけに雨って。今日の宇都宮も雨だったらしいですね、あはは。ここまでくると、もうあっぱれとしか言えません・笑(正さんは強烈な雨男です)。 |
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