8月16日

8月も折り返しを過ぎてしまった。焦る、とても焦る。やる気のなさを夏バテのせいにしていたりするけれど、きっとそれだけじゃないのだろうなぁ。『フーコー・コレクション3 言説・表象』(ちくま学芸文庫)を購入。いつの間にか4巻まで出版されていた。置いてかれつつある…。


8月18日

微妙に調子の悪い日々。方々への連絡が遅れがちですみません。近日中には、必ず。

昨日は某所にある旧病院跡へ。旧病院跡といっても、まぁ要するに我が学部の分院のことですけど(判る人だけが判る表現ですみません)。昔の霊安室やら解体室の前を通り抜けて、現在研究室として使われている建物へ。部屋の壁(霊安室側)にはお札が貼ってあった。この建物ではときたま奇妙なことが起こると、人づてに聞いた。他所の研究室に厚かましくも居座り、ソファーでごろごろしながらウィリアム・モリス『理想の書物』(ちくま学芸文庫)を読了。2000年以降使用されていないという病院は、いい感じに廃墟となり薄気味悪さと静謐さを漂わせていた。今度また、写真を撮りに行こう。

明日は上野で飲み。20日は美容室。今週はわりとたくさん人と会っていて、出かけていて、なかなか楽しい。自称引きこもりだが、実のところ私は結構出歩いている。引きこもっているのは身体ではなく、精神的な部分においてということなのだろう。


8月20日

土曜日:国会図書館→TSUTAYA→飲み 日曜日:美容室→ワタリウム美術館「さよならナム・ジュン・パイク展」

土曜について。TSUTAYAではまたCDをレンタル。ゲルギエフ繋がりでチャイコフスキー『交響曲第5番』。別にゲルギエフ好きというわけでもないけれど、最近はそういう気分らしくせっせとCDを借りる私。あとバーンスタイン指揮によるサン=サーンス『動物の謝肉祭』も借りてみた。この中の「白鳥」がとても有名。ジョニー・ウィアーが05-06シーズンのSPに使っていた曲だ。それとふと目について借りてきたブンブンサテライツの『ON』。これが結構好みで、気に入る。エレクトロニック、ロック、テクノの融合という感じなのかな。このアルバムはテクノ色はそれほど強くなく、彼らの中ではポップなアルバムに仕上がっているらしい。好きなのは最初の三曲、「Kick It Out」「Doors Empire」「Girl」。後半はちょっとダレるというか、私は飽きがきたのが残念。せっかくなので、他のアルバムも聴いてみよう。テクノとかクラブ系の音楽は、部屋で聴くよりイベントの方が絶対気持ちいいだろうな。もう少し生活が落ち着いたら、そういうイベントにも出かけたい。

夜は私がチューターをしていたR氏と飲み。仲の良かった留学生が一人また一人と日本を離れてしまうのが寂しい。炭火焼とビールで、上野の夜は更けていった。それにしても次に会う時は順調に行けば私が博士課程に入学しているはずなんだけど、順調に行くんかいな、本当に。

そして日曜。髪が伸びきっていたので久しぶりに美容室へ。カットついでに、カラーリングもしてもらった。色が明るくなったので、個人的にはお気に入り。やっぱり黒髪は重苦しかったかと今になって思う。きれいに整えられた黒髪ならいいけど、私のようにフワフワうねる髪で黒だと単に小汚いだけだしな。黒髪ラブの同居人からは不評だけど、私自身はわりと気に入ったのでしばらくはカラーを続けるつもり。今通っている美容室は担当がとてもいい方だし、以前カットモデルをやったので料金をサービスしてくれる。これもうれしい。ずっと美容室ジプシーしていたけど、ようやく落ち着くことができそうだ。

美容室の後はワタリウム美術館で開催されているナム・ジュン・パイク展へ。面白い内容だった。この展覧会に関する雑記は後日。帰り道、駅までの道のりの途中にあるアンティーク家具を取り扱った店にもふらりと立ち寄った。私が買うには明らかにゼロが一つ多い値段。買うことができるのが一番だが、買えなくてもきれいなものを見るのが好き。いい目の保養になった。店内のアイテムでは、壁に飾ってあった凸面鏡がたまらなく欲しかった。確か澁澤龍彦の家に凸面鏡が飾られていたよなー。実用的ではないアイテムだけど、あの鏡面の湾曲と映る歪んだ世界がたまらなく好きなのだ。もっと小ぶりのサイズがあれば間違いなく買って部屋に飾るのに。心の中の欲しいものリストに「小さめの凸面鏡」を追加しておく。

帰宅すると注文していたSERAPIMのブラウスが届いていた。予想していた色とは微妙に違い(やはりモニタで色を判断するのは難しい)、オレンジが少し混ざったような少し濃いめのべージュピンクだった(私はもっと明るいピンク寄りの色だと思っていた)。これは実は私の肌の色とは相性が悪いカラーなのだけど、デザインそして着た時のシルエットはすごく素敵。色の問題はコーデでなんとかごまかせそうだし、とりあえず大丈夫かな。花柄、レース、パフスリーブとロマンチック要素たくさんでかわいいブラウスです。心の中ははっきり言って「漢」なのに、外見ばかりが乙女化していくよ…。最近の私は、明らかに外見と中身が釣り合ってないと思う。


8月21日

カナダで開催されていた試合Summer Skate 2006の結果が出た。結果がすごい。織田君がぶっちぎりで優勝(まぁこれはある程度予測できたことなのだが)、2位がなんとパトリック・チャン(頑張ってるな〜)、そして3位が日本の神崎範之選手。神崎選手はSP終了時点で2位で(この時はパトリックが3位)、その結果を見た時はものすごく興奮した。神崎範之さんといっても、フィギュアに興味のない人は全く知らない名前かと思う。この人は現役京大院生で、学業とスケートを両立させているという日本の選手の中ではものすごく珍しいタイプの選手だ。海外の選手なら、有名大学に所属している人はいくらでもいる。しかし日本は教育システムが違うこともあり、なかなかそうはいかない。でもこの人は京都大学に入学し、学業と両立させながらスケートを続け、大学院にも進学した。おまけに理系で、所属は農学部。忙しい理系とスケートの両立は、本当に頭が下がる。以前、その両立と活躍により京都大学総長賞を受賞していた。「トリプルアクセルを飛ぶ京大生」とキャッチフレーズをつけられていたこともあったなぁ、そういえば。神崎選手は、今シーズンが最後らしいと話しに聞いた。今回はシーズンイン前の調整試合ではあるけれど、この結果は立派だと思う。最後の一年、納得いく結果を残してほしいものです。応援しています。できることなら、今年の全日本選手権は見に行きたい。でも時期が時期だし、名古屋だし…。神崎選手の滑りは一度しっかり見ておきたかったのだけど、もう私には機会がないのだろうか。神崎さんがヨン様エキシビジョンを滑った時の模様はこちらから。これを読むと、本当に彼は学業も頑張りつつスケートを続けてきたのだというのが伝わってくる。トッド・エルドリッジ好きというのも納得。

織田君は勝って当然の試合とはいえぶっちぎり優勝で、とても頼もしい。最近の写真を見ると、真っ黒に日焼けしてすごく元気そうだ。そして少し大人っぽくなったと思う。日焼けといえば真央ちゃんも今はかなり日焼けをしている。リンク映えのことを考えると美白の方がいいのだろうけど、個人的にはオフシーズンに日焼けしているのは健康的で好きだ。早くリザルトを見たいなぁ。ジャンプ構成やレベルが気になる。


8月22日

最近図書館帰りに街をふらふら歩くのが好き。昨日は銀座で降りて、ぶらぶらウィンドーショッピングをしていた。MATSUYAの1Fは私の好きなコスメやフレグランスがたくさん入っていて、とても買物しやすい。秋用にブラウン〜ゴールド系統のアイテムが欲しいので、その下見をしてきた。チョコレート色の口紅とかキンキラゴールドのグロスなどが欲しいのだが、だいたい目星がつけられたのでよかった。9月になったら買いに行くか。その後は通りを渡って教文堂へ。ここは500円の名作DVDが豊富なので、銀座に来るたびに立ち寄って一枚二枚買ってしまう。この日は調子に乗ってしまい、気がついたら一山抱えてレジに並んでいた。以下購入したもの。チャップリンの『モダン・タイムス』『独裁者』、シャーリー・テンプルの代表作『小公女』、可憐なリリアン・ギッシュがみたくて『散りゆく花』、サーカスマニアなので買ってしまった『地上最大のショウ』、コクトーの『オルフェ』(昔見た時の美しい映像の断片がほのかに記憶に残っている)、そしてヘプバーンの『ローマの休日』。こんな名作たちが一枚500円で本当にいいのかしら。いい時代になったものだわ。


8月24日

昨日は分院でしばし過ごした後(敷地内探検もした。わくわく)、某ゼミの方たちと飲み。楽しかったし、刺激もたくさん受けました〜。本来の所属先には全く居場所がなく人付き合いもほとんどない私だけど(完全にドロップアウト。出来の悪い学生ですからね)、最近は他の人たちと交流しているし楽しいからこれでいいや。もう無理だと悟って開き直ったら、少し気が楽になった。たぶん終わりまで、ずっとこのままだ。

さて、今日は大磯です。バタバタしていて忙しい。注文していたタニス・リーの『闇の公子』が届いたので、これを鞄に放り込んでこれから出かけてきます。


8月25日

ふと思い立って、久世光彦『蝶とヒットラー』(ハルキ文庫)を再読する。Bunkamuraドゥ マゴ賞を受賞した作品だ。本の後ろに辻邦生の選評が載っている。私はかなりな辻邦生好きなのだが、これを読むと「なんかチガウ…」と思ってしまうんだよな。理知的すぎるがゆえに、そぐわないというかなんというか。この本の中に出てくる「オルゴールの小さな博物館」へ近々出かけたい。場所は目白台。最近たまに目白台へ出かけているから、その時にでも寄ろう。

先日ロシアのテレビ番組にエレナ・アントン・ヤグの三人が出演したらしく、その写真がアップされていた(エレナとアントンはフィギュアのペアスケーターで、ヤグ同様ソルトレイクオリンピックの金メダリスト。もっともジャッジのスキャンダルに巻き込まれ金メダルをカナダのペアと分かち合ったが)。これがその一枚なのだが、ヤグが相変わらず期待を裏切らないファッションセンスを披露していて爆笑。チェックのシャツで袖が花柄って何ですかそれは。こんなもん見つける方が難しいだろというものをどうしてこの人はこうもあっさり着ているのか…。おまけに当然のごとくシャツはパンツ・イン。私服がダサダサなのはヤグのデフォルトだし驚きはしないけど、チェック+花柄はかなり強烈。テレビなのにさ。ああもう、これだからヤグ様は。。

それにしても、ヤグ・エレナ・アントンの三人がこうして仲良さそうにしているのはなんだか感慨深い。この三人は、今までに随分いろいろなことがあった。10代の頃のヤグがエレナに恋心を抱いていたとか(一人で盛り上がって婚約指輪を買って渡そうとしたらしい。あの、それはいくらなんでも先走りすぎでは)、ヤグとエレナの仲をアントンが妨害しようとしたとか。エレナの件を抜きにしても、ヤグとアントンがかなり険悪だった時期もあった。エレナとアントンだって複雑だ。エレナは前のパートナーとの間で大怪我を負い(相手のブレードが頭蓋骨に突き刺さり言語障害が起きるほど脳にダメージを負った)、競技生活も続けられないような状態になってしまった。アントンはそんな彼女を支え新たにペアを組み、そして世界の頂点に立った。恋人同士だったこともあるけれど、長野オリンピックの前に別れてしまったという。しかしその後も競技のパートナーであり続け、長野オリンピックでは銀メダル、ソルトレイクでは金メダルを獲得した。今はプロのスケーターとして活躍している。私はペアではG&Gと並んで、エレナ・ベレズヤナとアントン・シハルリドゼの演技が好きだ。小さく可憐なエレナを(その実気は強いのだが外見はとても繊細)大切な宝物のように扱うアントン。テクニックもあるし、二人の間に流れている情感がなんともいえない。おすすめの演技は2002年ソルトレイクオリンピックのSP「レディ・カリフ」。繊細できれいで美しいプログラム。演技の前に短いイントロダクションがついていて、二人の今までの経緯がコンパクトにまとめてあります。もう一つは同じくソルトレイクのEX、チャップリンの「キッド」をモチーフにしたプログラム。こちらは一転してコミカルでキュート。技術的にも素晴らしく、マイムもふんだんに取り入れてあり見ていて楽しい。エレナのキッドもかわいらしく、アントンのひょうひょうぶりもいい。この二人、実は9月の仙台&静岡COIに来日するんですよね。ああ、行きたいよ〜。エレナとアントン、大好きなのに。せっかくのチャンスなのに、行けなくてかなり凹んでます。修論のバカヤロー!


8月27日

今日もこれからお出かけ。なので出かける直前に、日記を殴り書き。昨日は大学繋がりのお友達と一緒にマシュー・ボーンの「シザーハンズ」へ。シザーハンズは私の予想とは違って、なんと科白が一つもなかった。音楽とダンスのみでストーリーが進んでいく。言葉による物語の補完がないので、これは映画を見ていない人にはかなり厳しいと思う。私は一応見ているのだけど、それがもう思い出せないくらい昔のことで細部が記憶になかったので、多少つらいところがあった。ダンスもバレエではないし、かといって前衛的というほど尖ってもいないので、少し物足りないものを感じた。それぞれ異なった衣装でステージに並んで踊っている姿は、ビジュアル的にはなかなか楽しかったけど。あと個人的に思ったのが、全体的に明るく愉快な雰囲気の舞台だということ。私はもっとウェットでダークな雰囲気が好きなので、そのあたりもちょっと好みとずれていたかな…。皆で明るく楽しく踊っているシーンよりも、夢とうつつの狭間の幻想的なシーンが印象に残っている。例えば最初の方のシーン、寝室に連れてこられてベッドに寝かせられたシザーハンズ、その側の壁のチアリーダーポスターが透けて(あれはどういう仕掛けだったのだろう)裏で少女たちが踊り出す。また一幕終了の前、ハサミではなく人間の手を持ったシザーハンズがヒロインの女の子と踊るシーン(周囲を樹木人間が取り囲んでいて、切なさとおかしさが入り混じっていた)。不満を書き連ねてしまったが、いい席だったし好きなシーンもいろいろあったし、やっぱり観に行ってよかったなと思う。よいチケットを格安で取ってくれた友達に感謝。

それにしてもご一緒させていただいたお嬢さまたちは面白い方ばかりで、私はずっと笑いっぱなしでした。その中でも一番のヒットはクラウザーさんですかね、やっぱり。『デトロイト・メタル・シティー』を好きな人とは無条件で仲良くなれる気がします。あれは名(迷)作。皆で一緒においしいイチジクのパフェも食べれて満足でした。ぜひまた一緒に遊んでくださいませ〜。


8月28日

スペースシャワー列伝 噛噛の宴@渋谷クラブクアトロ
出演バンドはPERIDOTS、Base Ball Bear 、the ARROWS、APOGEE、カラーボトル。出演順はカラーボトル→APOGEEで、私は2バンド目まで見て退場。本当は最後まで見たかったのだけど、予定が詰まりすぎていて5バンド出演するイベの最後までいるのは厳しかったので、本命のAPOGEE終了後は泣く泣く帰った。えーん、最後まで見たかった。というわけで、レポはAPOGEEに関してのみ。

セットリスト:01. Let It Snow 02.夜間飛行 03.ゴースト・ソング 04.DEAD HEAT 05.Slowmotion 06.Grayman 07.Program(たぶん、曲名がちょっとあやしい)

カラーボトル終了後、ステージの転換の時に地球儀が運び出されて次がAPOGEEであることを知る。スタッフと一緒にメンバーが楽器のセッティングを行っている。私の立ち位置は上手、場所的には6列目くらいだったろうか。大城さんの横顔、そして永野さんがよく見える場所。内垣さんは遠いが、見えないわけではない。一番見にくかったのが間野さんだったかな。永野さんがステージの上でマイクテストを行い、その直後に会場がすっと暗くなりスタート。闇の中にぼんやりと浮かび上がる、発光する地球儀。そして大城さんの手元を照らすライト。幻想的な風景だ。

流れてきたシンセサイザーの音、最初の曲は「 Let It Snow」。イントロのシンセの音が好き。メロディーを奏でるとともに、ちょっとノイズめいた音も加えてあり面白い。 Let It Snowは幕開けにふさわしい曲だなと思う。この曲で一番好きなのは、曲の最後で歌われる英語歌詞の部分。永野さんのハイトーンで伸びやかな裏声が、非常に心地よい。今日もその声に聞き惚れた。曲の最後は、イントロと同じシンセの音。扉が閉じるような、余韻のあるエンディング。

次が「夜間飛行」。この曲は、音源で聞くよりライヴの方がずっとスケールが大きくて好きだ。キレのいい永野さんのギター、そしてドラムの音。この曲のべ−スが非常にかっこよくて好きだ。AメロBメロと溜め込んでいたものが、ぱーっと解き放たれるようなサビ。キラキラして、音が空間に漂うようで…。私の非常に好きなAPOGEE特有のテイストだ。浮遊感を増幅するのは、シンセの電子音。思わず大城さんの横顔を見つめてしまう。キラキラしたシンセに、グルービーなベースの音のバランスが相変わらず絶妙だ。ただ、「Guess the reason why」の連呼の部分で、永野さんの声があまり出ていないのが気になった。普通はもっと伸びやかに歌い上げるのだが、今日はなんだか苦しそうで息継ぎも目立っていた。うーむ、体調が悪いのかしら。

そして「ゴースト・ソング」。待ってました!な一曲。今のところAPOGEEの代表作という感じなのかな。しかし、この曲もやはり永野さんの声が出ていなくて、演奏に埋もれがちになっていたのでどうしたのだろうと思う。声量がいつもほどないという感じ。あと声の伸びがあまりなかった。この後のインタビューで風邪を引いていたことが判明し、なるほどと思う。風邪特有のかすれ声はなかったが、とにかくいつもほど声が出ていなくて、永野さんの美声を満喫できなかったのが不完全燃焼と感じた理由の一つだったと思う。この曲も、ベースが非常にいい。内垣さんは頭を左右に振りながら、クールに弾きまくっている。「雨に紅花 爪を立てて 赤に濡れた 闇に夕顔 頬を撫でて 白く浮かんだ」奇妙な情景が浮かび上がる歌詞。「過去は押し花 舌を打って 黒に燃えた 現在は切り花 息をのんで 青に沈んだ」言葉は明確だが、この景色の全体は捉えどころがない。メロディー全体はキャッチーだが歌詞はわりと文学的で(日本の言葉を美しく使っている)、でも演奏は洋楽のエッセンスを取り入れて高度に洗練されている。いろいろなものが微妙なバランスで混ざっている曲だなと思う。じわじわ心に染み込んできて、取り憑かれる。

「DEAD HEAT」。うーん、実はこの曲が頭からすっぽり抜け落ちている。アップテンポでノリがよく、ライヴで聴くのは大好きな曲のはずなんだけど。「Slowmotion」、私は聴くのは初めてかな。スローなミディアムテンポ、歌詞はしっかり聴き取れなかったが都会の夜の情景を歌ったものだと思う。しっとりと大人っぽい感じで、でもどこか優しくて、すごく好きな雰囲気だった。APOGEEというバンドには都会的なテイストが似合うなと思う。同じ夜でも、夜間飛行のように遠くへ遠くへ飛んでいくのではなく、夜の室内でたゆたう感じ。まるで子守唄のように、耳に響いた曲だった。

そして「Grayman」。永野さんがギターを置いたので、そうかなと思った。この曲は7月の下北ライヴで見て度肝を抜かれた曲だったのが、今日のははっきり言ってイマイチ。せっかくギターを置いて身軽になったのに、永野さんは全然暴れなかった。内垣さんは手拍子でリズムを取り、手で、そしてスティックでシンバルを叩いていたけれど、永野さんは動かず。うーん、内垣さんだって動きがすごく大人しかったし、かなり不完全燃焼。やっぱり永野さんの体調が悪かったのかな。先日のインパクトに比べると今日のパフォーマンスは段違いに弱かったので、それが残念だった。

ラストの曲は「Program」。Graymanで拍子抜けしてしまって、これもあまり記憶にないなぁ。Graymanで壊れて終わりというのがよかった気がするけど、毎度同じパターンで締めというのもよくないか。今日のAPOGEEは、私としては少し不満のあった演奏だった。やっぱり永野さんの風邪というが一番の原因だと思う。声量不足、いつもの声の調子ではなかったのが痛かった。観客のノリは、全体的にあまりよくなかった印象がある。APOGEEのライヴは腕を上げたりノリノリになったりというタイプではないので判断しにくいが、前回の時は静かながら観客をグングン引き込んでいる印象があった。今日は他バンドのファンの方が断然多かった感じだし、惹き込み度も前より低かったように感じた。まぁこれは私が若干不完全燃焼だったからこう思うのかもしれないけど。

不満多めなレポになってしまったが、やっぱりAPOGEEはすごくいい。もうほんと大好き。まだシングルを二枚しか出していない、そんな時に出会えて幸せだったと思う。今後の活躍を見守っていくことができるのがとても幸せ。次のライヴも、行けたらいいな。


8月29日

タニス・リー『闇の公子』(ハヤカワ文庫)を読了。平たい地球シリーズの一冊目。闇の公子アズュラーンを中心とする、連作短編集。きらびやかで、めくるめくイメージを紡ぎ出すその文体にただため息。私は、アズュラーンに愛された人間の子シヴェシュを中心とした最初の物語が一番好きだ。地底の冷たい美しさ、太陽に恋がれる人間、アズュラーンのやさしさ、そして残酷さ。ラストシーンまで、息も継げないくらいの張りつめた気持ちで読み切った。銀の船を追いかけて地底の馬に乗るシヴェシュ、太陽の光が射し、馬は泡のように溶け去る。海に落ちて死ぬ、哀れで愚かな人間。最初の物語ばかりを取り上げてしまったけど、他の作品もすごくいい。災いをもたらす首飾り(宝石は花の子フェラジンの涙なのである)、鏡の中に消えたゾラーヤス(あのシーンは冷たく官能的)などなど…。宝石を鏤めたような文体も、幻想鉱物派の私としては惹かれてやまない。勢いで、次の作品『死の王』も注文してしまった。先ほど本が届いたのだが、すごく分厚い…。おまけにこれは英国幻想文学大賞を受賞した作品だとか。読むのが楽しみだ。この本は帰省の時、飛行機の中で読むことにしよう。表紙が萩尾望都でいいなと思って『闇の公子』を見返したら、こちらもそうだった。あら、うっかりしていて今まで気付かなかったよ。

さて、今日はこれからPlastic Treeのライヴです。どうなるのかな…。最近、プラに対する気持ちがかなり濁っている。文句ばかり言いたいわけではないのに、わだかまりなく楽しみたいだけなのに。ライヴ前に決まって憂鬱になっている自分が嫌かも。


8月31日

一昨日の日記であんなこと書いてしまいましたが、プラのライヴ、なかなかよかったです。少なくとも私はかなり楽しめました。久しぶりに聴いたShoegazer風の「夢の島」で私が好きなPlastic Treeの姿を再確認できたし、アンコールの「ヘイト・レッド、ディップ・イット」はセッション風の演奏で始まり赤い着物姿の太朗さんがステージに飛び出して気が触れたように暴れ回るという、壮絶で迫力のあるかっこいいステージだったし。うん、よかった。行ってよかった。文句が多いのは、きっと好きすぎるからなのだ。こんなに全身全霊を込めて追いかけたバンドなんて、私は他にないのだし。好きという感情も、複雑で難しいのね。

「夢の島」の演奏を聴いていた時、あの広く(東京のプラのキャパ基準で言えば狭いが)人が溢れた会場の中で、ひとりぼっちになったような孤独を感じた。孤独で、切なくて、淋しい。でもそのネガティブな感情が、どうしようもなく心地よい。音から浮かび上がる心象風景。景色が見える曲。こんな淋しさは、以前「プラネタリウム」を聴いた時に味わったことがある。「夢の島」も、こういう感情を引き出す曲だったんだな。「目にうかんだ愁しみを捨てに何処に行こう? キラキラした夢の島 何処にあるの? 燃えて消えないゴミ達と朽ちていきたいよ キラキラした夢の島 一緒に行こう」(Plastic Tree「夢の島」)

というわけで、秋ツアーにも結局エントリーしてしまいました。初日とファイナル。一応、控えめに。ちなみにファイナルは12月7日なのですが、これ私の誕生日なんですよ。27歳の誕生日はヴィジュアル系バンドのライヴでヘドバンしているわけですね、私…。それでいいのか27歳。それでいいのか修士2年。まぁ、それも人生ということで。

日記に書きそびれていましたが、8月27日はAPOGEEライヴの前に東京国際フォーラムアートショップ内で行われている「神村泰代 オルゴール展-スワン-」を見に行きました。展示内容としては以前啓祐堂で行われた時の展示と変わらないとのことだけど、会場が変われば展示の仕方も変わるので、やはり印象が少し違う。「スワンレイク」を奏でながらくるくると回る白い羽根のオルゴールが、ふと白い帆船に見える瞬間があった。空間に反響するオルゴール。音が溶け合い、メロディーが消える。その瞬間が、たまらなく気持ちいい。

神村さんと一緒に展示会場を抜け出し、カフェでアイスクリームを食べ(私が食べたピスタチオアイスはとてもおいしかった。溶けやすくて、それがちょっと困ったけど)、さらに東京国際フォーラムで開催されているフリーマーケットも覗きました。きれいな蝶の標本をお手頃な値段で取り扱っているお店があり、二人でお店の前にしゃがみこみ物色。お店の方のお話も面白く、気がつくと蝶の標本を一抱え買ってしまった。満足、満足。当分の間アメリカへ行ってしまう神村さんと、日本を立つ前にお会いできて本当によかったです。またいつか、きっとご一緒する機会があるでしょう。その時を楽しみにしています。

小林健二さんの展覧会「流星飲料」のDMが届く。岩手の「石と賢治のミュージアム」にて開催とのこと。行きたいけど、さすがに時期的に遠征は厳しいです…。ううっ、残念。いつか、石と賢治のミュージアムを訪れたいものです。

 

 

 

 

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