8月1日

8月。真夏。道を歩けば耳に響く、五月蝿いほどの蝉の声。

今日は、東京タワーの近くの図書館へ。どんよりとした曇り空の下、そびえ立つ東京タワー。私にとって「東京タワー」とは江國香織でもなくリリーフランキーでもなく、CLAMPの『東京BABYLON』なのだ。ストーリーの中心舞台ではないのにね。バビロンでトーキョーシティへの幻想を植え付けられ、ウィリアム・ギブスンで千葉シティを幻視する。私は、昔から都市が好きだった。だから、今こうして東京で暮らしているのは幸せなのだ。などとつらつら考えつつ、芝公園の前を横切った。

今後の舞台予定etc。マシュー・ボーンの「シザーハンズ」は行くことになりそう。11月の新国立劇場でのバレエ『白鳥の湖』は迷う。バレエ、行きたいな。うむむ。そしてまだまだ先になってしまうが、来年の2月からのシルク・ドゥ・ソレイユ「ドラリオン」。先日、e+からプレオーダーのお知らせが来た。シルク・ドゥ・ソレイユは昔から憬れだったので、絶対行くつもり。「ドラリオン」の「西洋と東洋の融合」、「平和を願うメッセージ」というのがちょっとひっかかるけどさ…。一瞬プレオーダーに申し込もうかと思ったが、公演期間が長いしプレオーダーは総じていい席が来ないので、エントリーは見送るつもり。でもこれで一般チケが一瞬で売り切れたら、宝塚の二の舞だ。どうしよう。シルク・ドゥ・ソレイユの演目で見てみたいのは「O(オー)」と「KA」。オーは水を使った演出が素晴らしいとか。「KA」は私の好きな演出家ロベール・ルパージュ(6月に観に行った「アンデルセン・プロジェクト」の人)が手がけているのが話題だった。いつか、観る機会はあるのだろうか。


8月2日

結局「白鳥の湖」のチケを取ってしまった。というわけで、シルク・ドゥ・ソレイユは頑張って一般で取ろう。それにしてもバレエか。。チュチュ着てトゥシューズで踊るんですよね?というレベルの知識しかありません。いや、実は数年前にローラン・プティの「デューク・エリントン・バレエ」(草刈民代や上野水香が出演していた)を観に行っているからバレエ自体は初めてではないのだけど、あれはまた今回のとは違うしな。そういえば昔Bunkamuraル・シネマでパリ・オペラ座バレエをテーマにした映画『エトワール』を観たけどその時はバレエにあまり興味がなかったから「ふーん」で終わったし…。とにかく一度観てみないことには何も始まらないし、なんとなく勢いで取ったチケットとはいえ、やはりすごく楽しみ。最近演劇熱が高く、冬物のJane Marpleの予約は控えようと思っているくらいです(笑)。 でもそういう時に限って豊作だったりするわけで。うーん、でも実際切実に必要なものはあまりないし、今年は演劇重視かなという気分に傾いています。重視って一番重視は修論ですよ、はい。でも私はストイックにはなれない人なんです。修論のためと言って娯楽を削ると逆にモチが下がってやる気を失うので。かえって今くらい野放しにやっている方が、明らかに勉強もはかどってる。

なんとなく原点に戻るつもりで、吉屋信子の『花物語』を再読中。一気に全部読むのは疲れるので(めくるめく花園ような文体、おお懐かしいうるわしの君よ)、ちょっとずつちょっとずつ。春頃神奈川県立文学館で吉屋信子の展覧会があったのに、行きそびれたなー。あの頃一番調子悪くて、開催中なのは知っていたけど神奈川までは出かけられなかった。そういえば今も展覧会がたくさん開催中だけど、8月27日で終了のものが多いからそろそろ計画的に動き出さねば。


8月3日

以前買ったまま積んでおいたDVD『オズの魔法使い』(監督:ヴィクター・フレミング、主演:ジュディ・ガーランド)を観る。名作映画が500円でのシリーズ。観るのは初めてではなく小学生の頃に一度観た記憶はあったのだが、ごく一部のシーンを除いて大半は忘れてしまっていた。しかしまぁなんとファンタジックで素晴らしい映画なのだろう。舞台セット、そして役者たちの衣装や踊りがとてつもなくキュートで、まるでシュガーコーティングされたような甘やかな世界だ。特に前半のキラキラっぷりがもうたまらない。そして改めて「オーバー・ザ・レインボー」は名曲だと思った。何度でも聴きたくなる。映画の中のジュディ・ガーランドは、所謂美人ではないけれどどの人をも魅了せずにはいられない愛くるしさだ。映画を観つつ、この後彼女の辿った人生のことを想う。薬物中毒、自殺未遂、結婚離婚の繰り返し。そして46歳で睡眠薬の大量摂取により死んだ。しかし、ここには一切の影はない。彼女はただただもう太陽のようで、おてんばでかわいいドロシーなのだ。私の好きな、古きよきアメリカの面影が濃厚な映画。たまに見返したくなる作品ですね。最近ミュージカルが前より好きになっている気がします。ミュージカルにバレエ、どんどん収拾のつかないことになってますな。最近は久しぶりに「映画を観たい」モードになっているので、今度この500円シリーズを買いだめしてくるか。


8月4日

佐々木丸美の著作が復刊されるという。それも全部、一冊残らず。このニュースを知った時は、衝撃を受けた。そしてそれに伴いネットで情報をいろいろと集めているうちに、彼女が去年末に亡くなっていたことも知った。私は佐々木丸美のファンではあるが、ネットで積極的に情報を収集しているタイプではなかったので、こうした一連の動きについては全く知らず、今になってただただもうすべてに驚いている。

佐々木丸美は北海道出身の作家。ずっと北海道に暮らし、また小説の中でも北海道の風景を描き続けた。彼女の小説の魅力はどうやって説明すればよいのだろう。あえてジャンルに分類すればミステリーなのか。しかしミステリーとしてはどう考えても粗がありすぎる。また心理学、特に超心理学への嗜好があり、それがミステリーという枠組みをより一層破綻させている。リリカルな文体は非常に魅力ではあるが、あまりに独特すぎるゆえ、すべての人が受け入れるものではないだろう。そして、実はすべての作品がリンクしている。個々の著作は、濃密な丸美ワールドの断片なのだ。なので、読み込めば読み込むほどその繋がりが見えてくるのもまた面白い。決して完璧で、瑕のない作品たちではない。佐々木丸美の著作は何かが過剰であり、そして何かが欠落している。それでも、一体なぜこんなにも惹きつけられるのか。

私が初めて佐々木丸美の小説を読んだのは、古本屋で購入した『雪の断章』と『花嫁人形』だったと思う。読んで「なんかすごい世界だ…」と思って気になりはじめ、そして『崖の館』で完璧にはまった。とはいうものの、彼女の世界のすべてを受け入れているファンとは言い難い。嫌いというのではない。しかし私の理解の範疇を超えている部分がしばしばある。『花嫁人形』なんて今でも怖いし、少女たちの愛憎、特に庇護者である男の愛情の奪い合いにはついていけなくなることがある。少女たちは、はじめから「女」である。それが遺憾なく発揮されるのが、モノローグであろう。またストーリーもそうだが、私にとって佐々木丸美の小説が途方もなく懐かしいのは私が北の大地に育った人間だからだろう。私は基本的に、北海道育ちで北海道を描く作家に対する評価が甘い(例:原田康子、初期の渡辺淳一)。読んでいると情景が浮かぶ。特に冬の描写、雪の描写。

そんな佐々木丸美ではあるが、1975年から1984年の間に矢継ぎ早やに18の作品を出版した後は、完全に沈黙した。そして現在すべての著作は絶版である。インターネット上でファンの熱心な復刊活動があったのだが、本人の意思により復刊は行われなかった。その理由の詳細を私はようやく知った。一つは、「過去の作品ではなく、新作でもう一度世に出たい」という気持ち。そしてもう一つは、過去に復刊活動があったけれどそれが結局実現しなかったこと。それが、余計佐々木丸美の気持ちを頑なにしていたのか。ともかく、本人の強固な意思により復刊しなかったことを知っていたので今回はまたどうしたことかと思ったらご本人が亡くなられていたのだ。そういうことだったのか。こうした経緯の上での復刊は、ファンの誰もが望むところではなかった。私もとてもショックだった。しかし、それでも私は復刊が行われることはたまらなくうれしい。絶版になってもなお、熱烈に愛され続けてきた佐々木丸美作品。それがよくやくまた、書店に並ぶのだ。そのことを、ただただ喜びたい。ネット上で熱心な復刊活動をされていた素晴らしいサイトはこちら。佐々木丸美作品のデータをはじめ、今回の復刊の経緯などさまざまな情報があります。

佐々木丸美は、2005年12月25日に心不全で亡くなった。ああ、彼女が愛した雪の季節に旅立ったのだ。そのことを思うと、涙が出そうになった。「雪が―。新しい雪が降ってくる。史郎さんの雪だと思った。」という『雪の断章』のラストが頭に浮かんでくる。『雪の断章』でデビューしてから、三十年目の死だった。


8月5日

これは、昨日の日記。大学に行く用事があったので、ついでに書籍部へ寄ってみた。欲しい本があったのでそれを探したのだが、どちらもなし。アールヌーヴォーに関する本を読みたかったので買おうと思った中公文庫の海野弘の『アール・ヌーヴォーの世界』もなかったし(『アール・デコの時代』はちゃんと置いてあったくせに)、久しぶりに再読したいと思ったヘルマン・ヘッセの『デミアン』もなかったし(ヘッセの本は5冊ほど置いてあったのに『デミアン』がないなんて。人生に惑う若人がたくさん集う場所だ、『デミアン』くらい置いとけ!)。ともかく肩すかしを喰らって、満たされぬ本欲を抱えて「さてどうするか。千駄木の本屋まで歩いていくのはたるい」(この日は絶望的に暑かった)ととぼとぼ弥生坂を下っていたのだが、坂の途中で「そうだ帰り道の途中にも古本屋はある。そこへ行こう」とオヨヨ書林へ足を運んだ。

ぶらぶら店内を眺めていたのだが、私はその店の片隅で死にそうになるくらい衝撃的なものを発見してしまった。それは『デザインの現場 4月増刊』(1993 Vol.10 No.61)。特集は「サッポロファクトリー」である。1993年はファクトリーが開店した年だ。もしかして、もしかして天体工場の記事があるのではないか…と震える指でページをめくったのだが、雑誌のラスト近くに天体工場の記事はあった。それも豊富な写真入りで、10ページも。これを発見した時、クラクラしそうだった。ずっとずっと、私は天体工場の情報を探していた。しかし今となっては消えてしまった施設の情報を集めるのは難しく、天体工場は私の記憶の中の施設としてのみ存在していた。それが、この雑誌に詳細な情報が載っていたとは。今はまだ興奮しすぎていてその内容をまとめることはできないのだが、ともかくこんな雑誌が存在していたこと、そしてそれに巡り会うことができたことを、ただひたすら感謝したい気持ちだった。一冊まるごファクトリーの特集なので、天体工場以外にも素晴らしい記事がたくさん載っている。まだざっと目を通しただけなのだが、ただただもうすべてが懐かしく、心があの頃に還っていくかのようだった。私は本当に本当に、ファクトリーという施設のコンセプトに影響を受けているのだと改めて思った。そして、この本にある眩しい煌めきは、今はもうほとんどない。この時のファクトリーは、バブルの余波があった時代だからこそ作れたものだろう。テナントばかりではなく、私の好きだったファクトリーの面影はどんどん消えていってしまった。最後に訪れたのはいつだろう。「もう、いいや。もはや私の好きだったファクトリーは存在しない」と思って、変わり果てたファクトリーを見たくなくて、行くことを止めてしまった。しかしこの本を手に入れたことにより、もう一度だけ見に行きたくなってしまった。この本を片手に、オブジェや空間めぐりをしてみようか。ファクトリーの偏った紹介ではあるが、以前私が撮った写真がこちらにまとめてある。久しぶりに自分で見直してみて、「私はビールを飲まないが」の記述に卒倒しそうになった。今じゃビール飲みまくりだってば。。このあたりのデジカメ写真は、初期アトランティスの気配が濃厚なコンテンツだと思う。そして私が昔のファクトリーを懐かしむように、初期アトランティスの面影も、今はもうない。

オヨヨ書林では、他に『ビアズリー伝』(中公文庫)とピエール・カミの『エッフェル塔の潜水夫』(ちくま文庫)を購入した。ほくほく。ファクトリー特集の『デザインの現場』の内容は後日少しまとめたいと思っている。天体工場のページにも、情報をアップしなければ。ともかく、今となっては私にオヨヨ書林へと向かわせた大学書籍部に感謝だ。大学を出た時は「使えない書籍部め。爆破してやる。」とテロリスト並みに凶悪なことを考えていたけれど。


8月7日

今後のスケジュール。8月26日が「シザーハンズ」、27日がAPOGEE、29日がプラ。そして9月1日〜5日までが札幌帰省。あわわ、なんかすごいスケジュールになってしまった…。今から死ぬ気で頑張らないと確実にヤバイ。

6日の日記。昼頃出発し、ラフォーレへ。Janeへ寄ったりその他あちこちのお店をブラブラした後、さらにラフォーレを出てヴィオロン、Lamp harajukuなどもチェック。久しぶりにまったりウィンドーショッピングを楽しむ。その後は銀座へ移動し、バーニーズでフレグランス関係を流した後は銀座人形館へ。実はもともとは行く気はなかったのだが、あまりに暑くて眩しくて、外界から遮断された静謐な空間が恋しくなってお店に飛び込んだ。藤井路以さんの人形展が開催されており、曜日の名前がつけられたシリーズあたりが面白いなと思った。また入荷したばかりらしい、小さめのアンティークドールたちがお店の片隅に鎮座していて、うっとりと眺める。そして大好きな浦野由美さんの少年人形と対面。個展の時とは別の少年がおり、深い緑色の洋服と金髪が美しかった。ドイツのミニョネットを見せていただいている時に、ずっとお相手して下さっていたお店の方が浦野由美さんだと判明し、卒倒寸前に。「ああ、憬れの人形作家さんにお会いするならこんなジーンズにブラウス、マニキュア落としたボロボロの爪なんて適当な格好しないでもっとお洒落してきたのに!」と半ばパニックに(笑)。それでもたどたどしく個展の時の感想をお伝えできたのは本当によかったな、と(後でもっとたくさんのことを言いたかったのに…と凹んだけれど)。浦野さんは長い髪、またブルーグレーのクラシカルなドレスがお似合いの、とてもきれいで優しげな方でした。お店では、岩井映子『人形たちの楽園』(アートダイジェスト)を購入。アンティークのポストカードを集めたシリーズの一冊目。人形と少女、そして手彩色による独特のカラーに目を奪われる。実際にポストカードとして利用することも可能で本自体バラせるので、小物としても活用できそう。Paris 1900 Postcard Collectionとして出版されているらしく、全10巻の予定だとか。さすがにすべては買わないとは思うが、好みの巻があればまた買ってしまいそう。

銀座人形館の後は、ポーラミュージアムアネックスで開催されている「香りを彩る ー古代の香り、西欧の香り、日本の香り」へ。要するに、香水壜のコレクション展。個人的な感想としては、無料だしこんなものかな、と。悪くはないが、展示数といい小粒な感じがあった。古代のものはあまり知らなかったので興味深かったが、近代のセレクションが少し好みと違っていたこと、ガレなどアールヌーヴォー期の作品も前日たまたまBunkamuraで開催されているエミール・ガレ展を観に行って(その感想はまた後日)、そこでガレ自身による美しいガラスの数々を見てしまったためここで展示されている大量生産向けのプロダクトが物足りなく思えたことなどが理由だったと思う。一番印象に残っているのは、日本の香の部分かな。きらびやかな蒔絵香箱が展示されていた。個人的には、香水壜は香水が入っている時こそ一番美しいと思う。なので、空の壜を眺めているのはどこか物足りなさが残る。古い香水壜を展示する時は、中身入りでというのは無理だというのは判っているけれど。私が現在買っているフレグランスはどこもポリシーに基づいてどの香りも同じボトルを用いているメーカーばかりなので、すっかり「ボトル買い」とは無縁になってしまった。またハコより中身重視になってしまった今ではボトル買いはあまりしないとは思うが、美しいボトルの造形を見るのは大好きだ。買わないけど鑑賞する、それが最近のボトルとの付き合いかな。なんだか辛口批評になってしまったけれどそれは半分香水ヲタの入った私の感想であって、展示自体はいいものなので銀座にお立ち寄りの場合はぜひぜひ。


8月8日

今更ではあるが、先日のDream On Iceのテレビ放送の雑感。すべてに対してではなく、ポイントだけいくつか。

まずは太田由希奈さんのスワンレイク。怪我で苦しんでいたけれど、2シーズンぶりの復活。やっぱり足下が危ういというかジャンプには致命的な弱さを抱えていますが、彼女の表現力、特に上半身の動かし方は絶品。私は太田さんのイナバウアーが大好き。イナバウアーといえば荒川さんで、荒川さんの高い身体能力を存分に利用した角度はすごいとは思うが、ビジュアル的に見た時に一番美しいのは太田さんくらいの反り具合だと思う。背中のカーブの美しいこと。ため息ものです。そして衝撃的だったのは、両足開脚でばたりと倒れ込むラスト。儚くて、ドラマティックで…。フィギュアがスポーツである以上、ジャンプが飛べないと結果は厳しい。しかし彼女の演技を見ていると、新採点制度が少し恨めしくなる。まだ旧採点なら、もう少し評価されるだろうに…。技と技の繋ぎもなめらかで、彼女の演技は本当に美しい。おまけにただなめらかで優雅なだけではなく、踊れる。これからも自分自身の故障との戦いになるのだろうが、彼女らしい演技を見せてほしいと思っている。DOIの時、太田さんに対する声援はひと際大きかったという。フィギュアファンは、この復活を待っていた。太田さんの演技だったら、ピカソダンス(2004年四大陸大会優勝時のもの。シニア一年目でいきなり優勝はすごかった)が意欲的で素晴らしいプログラムだと思う。

もう一人、印象に残っているのがジョニー・ウィアー。すごい人気…。技を決める時だけではなく、一つ動いたら「きゃぁ〜」と歓声が上がっているくらいですからね、はい。すごっ。その声援につられてなのか、ジョニーも笑顔全開。この人は、エキシビジョンであっても観客とコミュニケーションを取るというよりは自分の内側に入り込んで綺麗な滑りを見せるという印象だったけど、この日は少し違う。もっとオープンだ。こんな彼を、生で見たかったなと思った。それにしてもジョニー、お化粧ばっちりだよ。でもごめん、きれいというよりはなんか「いかがわしさ」が際立ってるような。。ジョニーは来日を満喫したらしく、原宿で買物もしたそうです(この人は買物大好き)。有名ブランドばかりではなくいろいろなお店を覗いたようで、Milkboyがお気に召したようです。ミルクボーイか、やるな。ジョニーらしい滑りだなと思うのは、例えば05-06シーズンのSP白鳥や、04-05シーズンのFS秋に寄せて(Otonal)。ジョニーは、ジャンプの着氷がとても美しく、すーっと流れつつバレエ的なポーズを取るのがとても好き。あとスピンも素晴らしい。私はもともとヤグヲだし基本的には男性的で力強い演技を好むのですが、ジョニーの硝子細工のようにきれいで繊細な演技もいいなと思う。昨シーズンは不本意だったろうから、今年はガンバレ。

織田君と真央ちゃんは、エキシビより試合ですね…。二人とも、基本的には試合の方が断然演技がいい人たちです。アマである以上、試合に強いのは本当に心強い。エキシビでの魅せ方が意識に上がってくるのはもう少し先かな…。真央ちゃんはなまじ試合がすごすぎるだけに、エキシビがどうしても評判が悪くなりがちなのが残念。試合ではやらなくなってしまった、つまり点数は低いけど美しい技の数々(彼女のレイバックスピンをはじめ、そういうのはたくさんある)を入れてくれたら絶対ファンは沸くと思うのだけど。そのうちエキシビでの魅せ方を意識してくれたらいいな。同じハバネラでも2004年の時の方がプログラムがいいし、逆に色っぽいと思う。子供ゆえの色気というか、なんというか。細くて小さな少女が大人のプログラムを滑っている、そこにやや倒錯じみた色気と魅力を感じるのですよね(って私は変態かよ)。ジャンプミスはあるけれど、やっぱりこちらの方が今のハバネラより好きだ。

DOIとは関係ないけれど、他にも私のお気に入りのプログラムをいくつか紹介。白鳥繋がりで、荒川さんのスワンレイク。この曲を用いると繊細で美しい演技になりがちだけど、彼女の場合は違う。なんというのだろう凛とした強さが感じられる。大柄な体を活かしてダイナミックにスピーディーに、かつ優雅にリンクの上を舞っているのがとても印象的なプログラムだ。曲もモダンアレンジを用いており(ファンの間ではそれゆえサイバースワンとも呼ばれている)、これがまたよかった。振りつけもすごく好きで、特に腕が白鳥の羽ばたきのよう。ラストのストレートラインステップの入り方も好き。今回紹介したのは、世界女王になった時の、2004年世界選手権優勝時の演技です。あとイナバウアー繋がりで、ジェフリー・バトルのアヴェ・マリア。女性のイナバウアーとはまた違った美しさ。アヴェ・マリアは技を詰め込みぎみな試合のプログラムとは違い、ジェフ本来の滑りの美しさを堪能できるプログラムだ。ファンの間で人気が高いのもわかる。解説の佐野稔、そして伊藤みどりからも絶賛されているその滑りはぜひ一度見てほしいです。小細工を削ぎ落としたからこそなお一層引き立つ美だ。


8月10日

暑い、だるい、やる気が出ない。。日記も超テキトー。チャップリンの『キッド』、そしてジョエル・ シュマッカー監督版の『オペラ座の怪人』を見る。「もっと映画を観よう」計画はわりと順調。感想はいろいろとあるが、とりあえず今はパス。そのうち気が向いたら書くかも。そして今は歌劇「トゥーランドット」の全曲を聴いているところ。荒川さんの金メダルで一躍有名になったプッチーニのトゥーランドット。私が今聴いているのは、ホセ・カレーラスがテノールで、ロリン・マーゼルが指揮のウィーン国立歌劇場で録音されたもの。トゥーランドットはストーリーもすごく好き。もちろんアリア「誰も寝てはならぬ」は素晴らしいが、他にも聴きどころはたくさんある。私ももっと聴き込まないと。トゥーランドットは、冷たい心を持った中国のお姫さま。荒川さんのはまり役でした。荒川さんの「トゥーランドット」に関する雑感は、いつか機会があればまとめたい。


8月13日

あ・つ・い。暑いの苦手、暑いのキライ。ここ数日もいろいろあったのだけど、文字に書き起こす気力がない…。音楽や本のことだけを簡単に。クラシック強化期間ということで、借りてきたベルリオーズの『幻想交響曲』。指揮はゲルギエフ。ゲルギエフといえば『シェエラザード』は以前から持っているし、そういえば札幌の母がゲルギエフ指揮のオーケストラを見に行ったと言ってたな。シェエラザードはかなり濃厚な感じだったけど、こちらは随分雰囲気が違うなぁというのが初見の印象。もっと淡白というか、透明だ。それこそ「幻想交響曲」の持ち味なのかなぁ。もう少し聴いてみよう。

今日は本屋にて萩原朔太郎『猫町』(岩波文庫)、泉鏡花『外科室・海城発電』(岩波文庫)、夏目漱石『倫敦塔・幻影の盾』(新潮文庫)、矢川澄子『「父の娘」たち 森茉莉とアナイス・ニン』(平凡社ライブラリー)、あと酒井景都『europikha(ヨーロピカ)』(マーブルトロン)を購入。なんか文学少女くさいラインナップだ…。


8月14日

遅くなったけど、先週行った「エミール・ガレとドーム兄弟」展の雑感。例によって「文章書きたくない」モードなので、かなり手抜きかついい加減。

今回展示されていたのはエルミタージュ美術館所蔵のもので、フランスからロシア皇帝へ贈られたものだそう。私は西洋史に疎いのでこのあたりの背景のことがよくわからなかったのだが、もっと知識があればより楽しめたろうになと思う。アール・ヌーヴォーは以前から好きだしガレも好きではあったが、ガレの作品は近頃ご無沙汰していた。というわけで、一つ一つ堪能するようにじっくり見回る。ガレの作品は美しかったしよかったが、一番印象に残っているのが「黄金の書」なのはどうだろう。「黄金の書」とは、ロレーヌ地方からロシア皇帝への贈物として制作された豪華装幀本。予想以上の巨大さ。本というよりもう家具並みなのだが、ものすごく存在感を放っていて気になって気になって仕方がなかった。中身は見れないのか…としょんぼりしていたのだが、後半の展示で中の絵画がプリントアウトされて展示されていた。中身はロレーヌ地方の様子が良く出ているわりあい牧歌的なものであったように記憶しているのだが、本そのものから感じられた重厚さや厳めしさは空想をくすぐる。私はやっぱり本が好きなんだな。

後半がドーム兄弟の展示。ドーム兄弟については全く知らなく、今回の展示で初めて知った。ガレの工場がガレ様式を守りアール・ヌーヴォーの衰退と運命を共にしてしまったのに対し、ドーム兄弟の会社は成立当初とは形を変えつつも現存する。時代の流行を巧みに取り入れて、生き延びたということなのか。しかし今回展示されていたのはアール・ヌーヴォー様式のものばかりで、はっきり言ってそれがガレの劣化コピーに見えてかなり物足りない感じだった。ガレと並べる、おまけにアール・ヌーヴォー期のものしか展示しない今回の展示ではドーム兄弟のガラスの魅力はあまり理解できないのだろうなぁと思った。実際ガレに展示室に比べて人が少なく、流し見ている人が多かったという印象を受けた。まぁ今回の展示の華はガレということで。

出口付近にアール・デコ期の作品が並べてあり、その中でも特にルネ・ラリックのオパルセントガラスに目を奪われる。ガレの作品は美しいし好きだが、実はガラスの質感で言えば少し好みと外れている部分がある。私がガラスが好きなのは、透過性・透明性があるから。その意味では、乳白色で光の加減で微妙に色を変化させる美しいオパルセントガラスの方が好み。うっとり眺めつつ、出口に向かった。

読み直してみて、ガレの感想が一番ないことに気付く。構図がすごい「ヒキガエルにトンボ文花器」、有名な「トケイソウ」、あとは大きく美しい「湖水文花器」などが印象に残っている。ああ、それにしてもエルミタージュ美術館に行きたい。だれか私をロシアに連れてって。


8月15日

9月はイベントが多すぎる。行きたいのに行けない、見送るしかない。切ないよ…。谷山浩子の猫森集会は今年はパス。日程的に合わないのが残念。15日はThe Velvet Teenのライヴだし。他の日程なら行けなくもないけど、どうせ今年の猫森集会に行くならAプロ「王国の日」がいい(Aプロは15日・16日)。ゲストが旭孝、スペシャルゲストが手嶌葵だし。ああ、なんでスケジュールが合わないのだろう。そしてもう一つ、ヤグディンが静岡COIで滑るのではとファンの間でまことしやかに噂されている。うわぁ、それも帰省直後だから無理。東京なら這ってでも行くけど、札幌の後に静岡へ行くのはきつい…。でもこれでRacingやWinter滑られたら泣く。もし来るならヤグヲタ的には出かけた方がいいのは判っているけれど、このままではJOガラの二の舞のなるのは判っているのだけど。でも、きついものはきつい。鬱々とした気分でヤグ動画を再生しまくっています。

そういえば日記でヤグディンの動画を紹介したことはなかったですよね…。いい演技はいろいろあるのですが、一番有名どころはオリンピックの時の演技かな。SPがWinter、FSが仮面の男です。見所はたくさんあるけれど、個人的には尋常ではない高さで飛ぶ3A、そしてステップを推したいです。もう一つ、これはモンタージュですがヤグディンとプルシェンコという二人の天才が同時代に生まれ、そしてしのぎを削って闘っていた、その軌跡の片鱗。二人に対するオマージュがよく現れています。

 

 

 

 

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