6月17日

梅の季節。梅ジャムを作り、梅酒を仕込んだ。湿った部屋に広がる甘酸っぱい梅の香りは、憂鬱な6月の唯一の楽しみなのである。

最近好きでよく聴いているのはロバート・ワイアットとAPOGEE。ロバート・ワイアットはようやく今になって聴くべき時が来たという感じか。もともと最初に知ったきっかけは、鈴木志保の漫画『船を建てる』だった。私の心のバイブルと言っても過言でもないこの作品のタイトルは、ワイアットの曲「Ship Building」の引用である。それでワイアットに興味を持ち、漫画を読了後すぐさま店に走り手頃な価格で見つけたアルバム「Old Rottenhat」を買ったのだが、正直に言ってその時は全然ピンとこなかった。無理もないかと今になって思う。聴いた時期は、私の人生において史上最高に音楽の趣味が狭かった頃だった。きれいで透明な女性ヴォーカルしか聴いていなかったのではないかと思うくらい、その他を受け付けなかった。そんな私がワイアットに惹かれなかったのは当然だ。結局聴くことができなかった「Ship Building」に想いを馳せつつも、そのままワイアットから離れてしまった。「Ship Building」は、幻の曲のまま私の中に存在し続けた。ひょっとすると、私は聴いて失望するのが怖かったのかもしれない。大好きな漫画のタイトルにも引用されている曲を全く受け付けないことを確認するのが怖かったのかもしれない。それほど、『船を建てる』は私に絶大な影響を及ぼしていたのだ。鈴木志保を通じてブローティガンに導かれ、そしてブローティガンにはどっぷりはまりつつ、ワイアットの方は流れに乗ることもできずに川のほとりで指先をほんのり濡らす程度に触れてから、すぐに離れてしまった。

そして月日は流れて2006年6月。急に「ワイアットのShip Buildingを聴こう」とほとんど神のお告げにも近いひらめきにより、レンタルショップへ走った。もともと少しずつこの流れは出来上がっていた。大好きなベン・ワットのアルバム「ノース・マリン・ドライヴ」のCD版にはワイアットと共演したEP「summer into winter」が収録されていてこれがとても好きだったし、西脇さんによるsakanaのバイオグラフィーに目を通していたらワイアットのことが出てきたり(奇しくも言及されている曲がShip Buildingだった)、本当に今更なのだけど私の大好きな大好きなブライアン・イーノの「Music For Airports」の「1/1」の美しすぎるピアノの音がワイアットの演奏だと知ったり(そんなのイーノファンの間で常識ですか?すみません、私本気で今まで知らなかった…)。こうして、一度は離れてしまった流れがまただんだんとワイアットに引き寄せられてきた。

長き過程を経て、私は今、「Ship Building」を聴いている。今まで待っていてよかったのかもしれない。そう思うほど、静かな哀しみに溢れた曲が心に響いてきた。フォークランド戦争をテーマにした曲。歌詞はクライヴ・ランガー。曲はエルヴィス・コステロ。それを、ワイアットがおだやかに歌い上げるのだ。まだワイアットについて語れるほど聴き込んでいないので、それはまた、私の中で時が満ちた時に。ワイアットの作品からは、どことなく水や海の匂いが漂ってくる。あの声、そして音作り。遅まきながらようやくワイアットに出会えた私は、これからじっくり聴き込んでいきたいと思うのだ。

すっかりAPOGEEのことを書きそびれてしまったよ…。7月11日の下北ライヴに行くので、ライヴ後感想がてらこの新人バンドについて語りたいと思う。誰かに勧められたわけでもなく、他人の影響は全くなしに偶然と自分のカンで手に取った音源にこんなにはまるとは(普通は何かの音源に出会う時は何かしらの影響がある場合の方が多い。他人の日記や好きなミュージシャンのフェイバリット等々、何らかの導きの糸があるものだが今回は全くそれがなかった)。出会いは「ゴースト・ソング」で、すぐに「夜間飛行」も購入した。どちらのシングルもヘビロテ中。音も曲もバンドの作り上げる世界観もすべてが琴線に触れて夢中になるというのは私にとってPlastic Tree以来の出会いかも。APOGEEにはめちゃめちゃ期待してます。あ、もちろんプラのニューアルバム「シャンデリア」にも期待してます。まだ曲のタイトルやジャケットを見ただけだけど、「アルバムとしては久方ぶりの大ヒットになりそう」という予感に包まれています。予感が当たるといいな。発売まで後十日ほどですね。


6月18日

プルシェンコがパパになった。ジェーニャ、おめでとう。2006年はオリンピックで金メダル、そして子供と彼にとっては最高に幸せな年に違いない。正直に言うと、全盛期の頃の圧倒的に鋭いジャンプやテクニックは今の彼にはないと思う。その分表現力が増して、補ってはいるけれど。ヤグディンが先天的な故障のために引退して結果的に勝ち逃げされた後、彼は怪我などの故障に苦しみつつもトップに君臨し続けた。好敵手の不在、実力が拮抗しているようなライバルは誰もいない。ひたすら自分との戦いを続けてきた四年間だったはずだ。トリノのSPは文句なく素晴らしかったが、完全燃焼ではないように見えたFSには私はやや不満が残った(全力で勝ちに行かなくても勝ててしまう、それがプルシェンコのポジションではあったのだろうが)。しかし表彰台の上の彼の表情を見て、喜びを爆発させるでもなく静かな貫禄を醸し出しながら微笑む彼を見て、「ああこの結果になってよかった」と心の底から願っていた自分の気持ちに気付かされた。彼はアマチュアからは引退しないが、次のシーズンは競技を休むという。タイミング的にはぴったりなのだろう。この休暇が永遠の休暇になってしまうのではないかという一抹の不安がないわけではないが、それでもゆっくり休んで欲しいとは思う。シニアに上がってもう何年だろう、幼少の頃から圧倒的なテクニックの持ち主で、小生意気そうな表情で滑る天性のエンターテナーだったあの少年が父親になったということが、なんだかとても感慨深い。

それにしても図抜けているプルシェンコの不在で、来シーズンの男子シングルは混戦状態でかなり面白いことになりそうだ。贔屓…というより「この演技が好み」という選手はもちろん何人かいるのだが、基本的に今の男子シングルの選手は皆好きだ。なにげに個性派揃いよね…。個人的に応援しているのは、フランスのブライアン・ジュベールと日本の織田信成。ジュベールはトリノ後の世界選手権のSP・FSはほぼノーミスで力強い演技が本当に素晴らしかった。しばらく苦しんでいたけど、ようやく完全復活。私にとってジュベールの魅力は、今の男子の中では希有になってしまった重量感のあるジャンプ。フィギュア選手として見ればマッチョすぎるかもしれないそのたくましいガタイで飛ぶ重いクワドはパワーに満ちあふれていて爽快だ。彼の演技を見ていると、まさに「男子シングル」という気がする。おフランス男のくせにイマイチ垢抜けない野暮ったい青年で(顔は整っているのにね)、スケートに対して真剣で真面目すぎる故に失言が多くて、どうしようもなくヤグヲタで(ほとんど崇拝の域に達していると思う。演技もヤグの真似と言われがちだし)、肉体自慢なのか知らないけどヌードを晒すわとにかくメディアの前で脱ぎまくるし、それ以外でも本当にもうこの坊やは…と思わされることが多いのだけど、一生懸命で真摯な悪ガキの彼はどうしても憎めない。素晴らしいジャンプテクニックに対して体の固さやリズム感のなさがウィークポイントではあるけれど、ヤグの真似ではない彼独自の演技を見つけてくれたら本当にうれしいなと思う。織田君は、シニア一年目だった昨シーズン素晴らしい成績を残した。日本男子は本番に弱いタイプが多い気がするけれど(プラクティスキングと言われた本田武史、自爆癖のある高橋大輔etc。どちらも素晴らしい選手ですけどね)、彼の本番での安定感は感動的だ。おまけに性格やキャラクターを活かしたお笑い路線で滑れるのも彼の個性。すごく面白いスケーター。ジュベとは正反対な、ふわっと軽いジャンプと素晴らしい着氷も特筆すべき彼の強みだし、レベル4を取れるスピンも大好きだ。今回言及したのはこの二人だけだが、男子に限ればかなり下位ランクの選手まで追いかけているし、それぞれ好きで応援している。最近はついにジュニアにまで手を出してしまった。カナダの新鋭、15歳のパトリック・チャンに注目中。来年の世界ジュニア選手権は、パトリックと日本の無良君で優勝争いかしら?パトリックは15歳とは思えない演技だし、顔も年齢よりずっと大人っぽいとは思うけど、でもすごくかわいいし。将来が楽しみな選手です。ああ、こうやってどんどん深みにはまっていっちゃうのね…。あとフィギュアヲタやっていると必然的にクラシック音楽と触れ合うためか、すっかりクラシック熱も高まってしまいました。先日ラヴェルのCDを買ったので、明日はその話しでも。


6月19日

昨日は文鳥舎にて海野弘さんのトーク。落ち着いたら簡単なレポをアップします。実は今日はこれから六本木Y2Kへ「凡庸な逆回転 その十三」を観に行くので時間がないのです…。バタバタ。睡眠時間削って遊んでいる私は馬鹿だと思います。。

永嶺重敏さんの新刊『怪盗ジゴマと活動写真の時代』(新潮新書)を購入。永嶺さんがこういう本を出版されると最初に知った時は驚いた。読むのはもう少し先になってしまいそうだけど、楽しみ。私にとって、『雑誌と読者の近代』や『モダン都市の読書空間』は今の研究において導き手的な存在だ。自分の研究は全然まとまっていないし上手くもいっていないけれど、やっぱりこの領域からは離れられないなと思う。時間はかかってしまうだろうが、頑張ろう。思えば人並みのことをするのに他人より3倍時間のかかる私が、他の人と同じペースでやろうと思っていたことがそもそもの間違いだったのかもしれないな…。別に諦めているわけではないけれど、しょうがないなと思っている部分は確かにある。

先日購入したCDは「ラヴェル ピアノ作品全集」。演奏はモニク・アース。クラシックに全く興味のない頃から「亡き王女のためのパヴァーヌ」だけは好きだったこともあり、ラヴェルに対する思い入れは深い。今は「古風なメヌエット」や「水の戯れ」を好んでよく聴いているが、「夜のガスパール」や「高雅で感傷的なワルツ」「クープランの墓」もいいな。クラシックに対する知識は皆無なので、CDについているブックレットの解説が結構ありがたかったりする。私の行くTSUTAYAはクラシックの品揃えはかなり弱いので、結局クラシックがらみは自分で買わざるを得ない状況なのはネックかも。でも火がついちゃったから止まらないだろうなー。フィギュアファンは同時にクラシックやバレエなどの舞台好きな方も多いようなので、あちこちのテキストを読んでいるとすごく楽しいです。それに対して私はヴィジュアル系好きなフィギュアヲタだけどさ。


6月20日

「凡庸な逆回転 その十三」6月19日@六本木Y2K
出順:Ya-su→オナン・スペルマーメイド→黒色すみれ+アネモネ→ネジ

Ya-su(セトリ不明:2曲目が村下孝蔵「ソネット」のカバー、3曲目が「ラムネ色のすたるじぃ」、また「栗の花」も演奏された。)
いつ聴いても気持ちのよい、ヤスさんの唄の世界。 個人的に、カバーの「ソネット」にすごくすごく惹き込まれた。歌詞もメロディーも素晴らしい曲。ヤスさんはよく伸びるハイトーンの歌声が特徴的で(ハイトーンといっても硬さはなく、あくまでもやわらかくやわらかく、そして伸びやかなのが素晴らしいと思う)、でもこの曲は音域が低いのでいつもとは違う声のトーンを楽しめた。特にサビの部分の声がよかったな。低い音域で響かせた歌声は、さがならチェロのようだった。こういう音や声はヤスさんのオリジナル曲では味わえないのものだ。曲自体も非常に気に入ったので、今度村下孝蔵のCDを聴いてみようと思う。

その他私の大好きな「ラムネ色のすたるじぃ」、さらに「自分の曲の中では珍しく前向きな歌。6月の歌なので今の季節にふさわしい」というような前振りで歌われた「栗の花」。本人が「前向き」なんて言うからどんなもんだろうと思って聴いたけど、あれはあくまで「本人比では…」というレベルだと思いました(笑)。個人的にはYa-fooの曲は暗いとも後ろ向きとも思わない。ただ、聴いていてふっと切なくなることはよくあるのだけれど。それは曲の中で描写されている繊細な情景や感情によるものであり、突き詰めると「郷愁」ということなのかもしれない。曲の中で歌われている栗の花というのがどういう花なのか、私は全く知らない。なので歌詞を聴いて情景を頭の中で描きつつ、栗の木に白く小さな花を咲かせてみた。白く可憐なイメージを勝手に抱いたのだけど、実際はどうなのだろう。

歌い終わった後、最後の挨拶でソロで歌っているにも関わらず「Ya-fooでした」とうっかり間違って言ってしまってヤスさんが可笑しかった。思えばこれが今回の凡庸でたびたび起きたハプニングの前触れだったのかもしれない…。

オナン・スペルマーメイド(セトリ不明)
ドラァグクイーンのオナンさん、後方に立っていたので衣装があまり見えなかったのだけど、真っ赤な装いでかなり素敵な感じだった。今日はトークが絶好調だったと思う。Y2Kの近くにあったゲイバー(名前は「ハイピッチ」だったかな?聴き取れなかったので詳細は不明)で働いていたという話しに始まり、実は外国人が好きだとか(最初に付き合った人がイスラエル人で、その後もずらずらと海外の国を挙げて「オリンピックができそうね」と言っていた)、ニュースの森の副音声をずっと担当していた人と付き合っていたとか(会えなくて寂しい時は副音声の声を聴いて心を慰めていたらしい)、なにやら男遍歴の話しに。また後半のトークはパワーストーンについてで、現在大変はまっているらしく、ステージの上でもあれこれ石を披露していた。そういえばオナンさんは昔、河原で拾った石にアクリル絵具で絵を書いて「パワーストーン」と言って売っていたらしい(苦笑)。そういうのはパワーストーンとは言いません、パワーストーンとは。

歌った曲は4曲ほどだったろうか、2曲目の「物語」は歌詞を忘れたのか歌が止まってしまい、一番なんてほとんどカラオケ状態でバックの音だけが流れていたのにはびっくりしてしまった。オナンさんのこんなミスを見たのは初めてだ。本当にグダグダでどうなることかと思ったが、途中でなんとか体勢を立て直して最後まで歌いきった。ところどころで自嘲的というか半分ヤケクソな感じで高笑いを入れていたのが印象的。曲の終了後拍手が起こったが、「拍手はいらないわ」と言ったのは歌い手としての矜持か。「物語」を歌ったのは久しぶりとのことで準備不足だったのかもしれない。ミスばかりについて取り上げてしまったが、他の曲はいつも通りのオナンさんワールドだった。色とりどりのライトに照らされた、キッチュで紛い物、ニセモノの世界。その中央で、愛の歌を高らかに唄いあげるオナンさんなのでした。

黒色すみれ+アネモネ(黒色すみれ:純血は赤→永遠に麗しく すみれの花よ/アネモネ:砂の色→2曲目は不明/黒色すみれ+アネモネのセッション:ミル・フィーユ)
待ちに待った黒色すみれ!期待に違わず素晴らしかった。演奏したのは2曲だけだったが、黒色すみれの圧倒的な世界観を見せつけて会場を魅了していた。私はもともと黒色すみれが好きだったけど、今日をきっかけとしてプラファンの間でもすみれさん好きが増えそう。唄とピアノのゆかさん、ヴァイオリンのさちさん、衣装などのヴィジュアル面に対する強いこだわり、演奏すること自体が一つのパフォーマンス。だからステージの上がさながら芝居小屋のようで、ただ単に曲を聴いている以上の刺激がある。ゆかさんは本当に唄がお上手で、生の歌声は音源で聴くよりずっといいなと思った。私は特に1曲目の「純血は赤」が好き。赤ずきんをモチーフにした曲は、それ自体が一つのお芝居のようで、ヴァイオリンでぎぎ〜と扉が開く音を出すなど演出が効いている。ラストの方のたたみかけるようなテンションまで、完璧だった。曲の合間にゆかさんが告知をしたのだけど、告知ももっとパフォーマティブなのかと思っていたら素の声で飾らずといった感じでおまけにすごく腰が低くて、すごく人の良さそうな性格が滲み出ていたなと思う。

そしてアネモネ。ヤスさんと静暮さんのユニット。今まで一度も観たことがなかったし音源を聴いたこともないので、一番先入観なく聴いていたかな。静暮とヤスさんの声のハーモニーが好きだなと思う。どちらの声が表に出てどちらが背景になるかで印象が変わるのが面白い。静暮さんの歌声にある暗さは、ヤスさんの上昇するような浮遊感とは対照的に、もっと下向きというか体に粘りつくような感じだという印象を受けた。いい意味で湿っているというべきか。仄暗い「砂の色」も、中盤でのヴォイスのサンプリングが印象的だった2曲目も好きだったし、機会があれば音源にも手を出してみたいなと思う。またいつかアネモネを観る機会があればいいな。

そして最後には黒色すみれとアネモネのセッション。演奏したのはアネモネの「ミル・フィーユ」。すみれさんが加わったからかもしれないけど、全体的に芝居っぽくて楽しい。やすさんも長い科白を言っていた。ステージの上の人が多く、まるでお祭りのような雰囲気が漂う。学芸会のような、こういうノリはすごく好きだ。黒色すみれもアネモネにも満足。

(ネジはまた後日)


6月21日

週末にJane Marpleの秋物のカタログを見に行くことになりました。もう秋物か、早いなぁ。思えば去年の秋物は大ヒットでツボるものばかり、おまけに気に入りすぎて同型多色買いもザラという、大変かつ楽しいシーズンでした。予約表がすごいことになっていたもんな、あの時は。。今年はさすがにそこまでヒットはしないだろうけど(逆にしたら困る)、ジェーンは秋物が一番好きなのでカタログを見るのが本当に楽しみです。普段着として用いるので基本的には使い勝手のよいもの、そしてそれとは別に着ると心が踊るような非日常なワンピースやジャンパースカートなどのアイテムを少し…という感じで予約したいなと思っているのだけど、さてさて実際に見たらどうなることやら。あとようやくロゴシリーズの扇子を引き取ってきました。最近蒸し暑くて「扇子はまだ?」と思っていたのでようやく入荷でうれしい。実物をみたら、すごくかわいかったです。リボンの飾りもついていて、扇子なのにポップでキュートに仕上がっている。結局ロゴシリーズはサンドレスもバッグも扇子も全部黒にしてしまって「全部同じ色にしなくてもよかったのでは…」と思っていた部分があったけれど、実際に使ってみるとやっぱり黒が合わせやすくてよかったなと思っています。それと扇子を引き取るついでにあまりの暑さに負けて、涼しげなトップスを数着買い足してしまいました。セールまでは我慢と思っていたのに、暑さに耐えられず袖の短いカットソー類を補充。レエスが素敵です。これを着て、頑張って夏を乗り切らなければ。


6月24日

文:天沼春樹/画:七戸優『カンパネルラ 機械仕掛けの少年の角笛』(パロル舎)を購入。以前から七戸優さんの絵が好きで、本を集めようと思いつつもずっと買いそびれていたが、ようやく一冊購入。うれしいことに、サイン入りの本を手に入れることができた。ウサギと文字を組み合わせた絵画的なサインが、金色のペンで描かれていてとても素敵。絵を眺めつつ、ゆっくりテキストに目を通していく。私の好きな話しはこれ。

ぼくたちがすきだった物語があった。ちっぽけなガラス球のなかに宇宙があって、その球を奇妙な生き物がもてあそんでいる。生き物はひどく醜い。ガラス球に自分の姿が映るのをおそれて、たえず虚空にほうりなげる。もしも、彼が虚空の球をうけそこなったら、宇宙はこなごなに砕けちってしまうのだ。そんなことも知らないで、ガラス球のなかの銀河宇宙はかってな夢をむさぼっている。そして、きみはこういうのだった。「だから、こうしているぼくらも、草原に寝ことがった拍子に、いくつもの宇宙をつぶしているのかもしれない」と。

読み終わると、ふとエスカルゴスキン創刊号に載っていたインタビューのことを思い出して雑誌を引っ張り出してきてみた。これを読み直し、改めて七戸さんの中でのあがた森魚や稲垣足穂の影響の強さを思い知る。私もやっぱり、原点は足穂なんだろうな。足穂は、放射状に広がる興味の連鎖の中心点に位置している。そしてインタビューでたびたび語られている「宇宙的郷愁」。そう、これこそが私が最も足穂から影響を受けているものなのだ。

毎日忙しいけれど、こういう感覚だけは手放したくないと思う。宇宙的郷愁。大気の底で呼吸しているということ。体を形成している無数の原子。銀河の中の太陽系の中の地球という惑星の上で暮らしていること。途方もなく巨大なスケールの宇宙のこと。鎖のように繋がっているすべて。誰も知らない、創造主のこと。


6月25日

Jane Marpleの秋物のカタログを見てきました。全体として見ると、少しイマイチ…かも?結構定番のものが多く、普段からジェーンを買っている人にとっては目新しさの少ないデザインが多かったように思います。あと価格は多少上がり気味かな。。特にスカートの値上がりが目につきました。JSKとほとんど値段が変わらないというものが多かったです。普段着としてガシガシ着るのでスカートの方が着回しがきくのだけれど、この値段ならJSKやワンピの方がいいやと思うものがいくつもありました。この傾向はずっと続くのかなぁ。これが続くようなら、スカート愛好者としてはダメージを受けざるを得ません。

個人的に一番ヒットしたのはバイオリンシリーズ。シリーズと呼ぶにはアイテムがとても少なかったのですが、シックで大人っぽいデザインといい素材感といい完璧でした。上質な遊び心が感じられる、控えめなんだけどファンタジックな雰囲気です。デザインは、バイオリンの弦が縦に長く入っていて裾の方に大きく「f」みたいな形の溝があしらわれていました。去年の楽器シリーズといい、楽器や音楽ものに目がない私は真っ先に予約。タックの入っているスカートがとてもかわいかったけどJSKとあまり値段が変わらなかったので、せっかくだからと後ろが編み上げになっているJSKを予約しました(予約表を見たらバイオリンワンピースと書いてあるけど形としてはJSKだと思う)。色展開はブロンズ・チャコールグレー・ブラックで、私はブロンズにしました。ブロンズが一番人気っぽかったですね。お金に余裕があれば色違いでスカートを予約したかった…と今でも未練タラタラです。店頭に出ればいいな。

あと久しぶりに童話シリーズが出ていました。ブレーメンの音楽隊。ただせっかくの童話シリーズ、総柄は好みからはずれていたのが残念。ポップでカラフルな背景に、物語の動物たちが影絵で描かれていました。刺繍の方はわりと今までの路線だった気がします。ブレーメンシリーズで気になったのは、こういうのとは全く関係ない地味で普通のニットアイテムなどでした。少し素朴でフォークロアな香りのするアイテムたち。余裕があれば欲しかった…。実はブレーメンシリーズは一点だけ予約したのだけれどそれはなんとコート。丸襟といいボタンといいラインといい、すごくかわいくて一目惚れでした。同じコートならドンルから出ているものの方がシックで素敵でずっと長く着れる…と理性は言っていたけど(実際あのコートはよかった)、煩悩に負けて今回はかわいらしさのあるジェーンの方に。写真に載っていた色は真っ赤で、これも本当にかわいらしかったけど着回しを考えてとりあえず黒を予約。秋コートがなくて実は今まで困っていたから、ようやく一目惚れなコートに出会えてうれしいです。

他に予約したのはオールドライブラリー。雰囲気としては去年の楽器柄とか、あとは以前のエンブレムシリーズに近いかな。型はたくさんたくさんあったし値段もわりと手頃だったので、おすすめです。私は手持ちのアイテムとかぶるものが多かったからスルーしたけど、ジェーン初心者だったら絶対予約を入れまくったと思います。とまぁそんな感じで服は予約しなかったけれど、このシリーズのスクールバックはしっかり予約。ゴブランと皮の組み合わせで、かっちりした形で横も40センチくらいあるから荷物もたくさん入れらそう。手持ちと肩掛け、どちらもで使えるデザインだったと思います。凝った作りのせいかお値段もワンピース一枚分でどうしようかすごく迷ったけれど、何度もカタログをめくってみてやっぱり気になるアイテムだったからワンピを諦めてこちらに予約を入れました。

これ以外で予約したのは帽子など(帽子命です。特に秋冬は)、小物を少しという感じでしょうか。今期は私にしては珍しくアクセサリーが全然ツボりませんでした。まぁ去年の秋がツボりすぎて買いまくってしまったから、今年はこれでよかったとは思うけれど。前評判を聞いて妖精シリーズや鍵シリーズは絶対ツボるだろうと思っていたのに、あまりピンとこなくて拍子抜け。結局予約したのは鍵シリーズのヘアピン一本だけです。ただ実物を見たら好きになることもあるので油断はできませんが。今回は結局予約は大物ばかりという結果に。あれ、こんなはずでは…。ただでさえ値段が上がる秋冬ものなのに大物ばかり予約してしまって予約点数がすごく少なくてちょっと物足りなさを感じている部分はあるけれど、コートは絶対必要だったし服も正直足りていて困っているわけではないので(でも買い続けるけどさ)、これでよかったのでしょう。

以下予約はしなかったけれど気になっているアイテムやカタログ雑感など。ロイヤル別珍シリーズのクララワンピースがとてもかわいかったです。個人的にはボルドーかな。これとオールドライブラリーのバックの間でずっと迷ってました。でもワンピはまたそのうち出そうな形だったのと、バッグは希望の色が予約で埋まりそうということで結局バッグに軍配を。あとヴィクトリアンストライプのシリーズはかなり人気だったようです。生地の上にチュールを重ねたスカートやJSKはよかったな。色も結構シックで、長く着れそうな雰囲気でした。これも迷ったけれど、優先順位から言えば他のアイテムに負けてしまったので結局予約は入れず。タータンやレジメンは、正直に言って目新しさはなかったし、去年の秋物や冬物の方が断然かわいかったと思います。こちらは残念。靴はリボンのついた靴やブーツなど、基本的にどれも好みでした。ただ靴まで手が回らなかったので今回は見送り。リボンのついたヒール靴が欲しかったなぁ。あとはブーツとか。ドンルは、ジェーンに比べて値段がリーズナブルな気がして仕方がありませんでした。こちらの方が大人ブランドなはずなのにね…。デザインや値段ともに普段使いによいアイテムが揃っていたと思います。派手さはないけれど、好印象でした。ドンルで気になったのは、カタログの一番最後の方に載っていたインドの生地を使ったシリーズ(シャンタンかな)。このシリーズの、丈が長めのスカートがものすごくツボでした。色展開は黒とボルドーとエメラルド。写真がボルドーしかなくてそれがすごく素敵だったのだけれど、普段はあまりないエメラルドという色もとても気になって結局入荷連絡に。予約だけで予算一杯一杯だから買うのは厳しいかもしれないけど、ご縁があればいいな。あとドンルかジェーンかもどのシリーズなのかも忘れたけれど、綿ローンのストールが気になりました。ピンタックなどが入っていて、ロマンチックなアイテムでした。色展開はホワイトとアイボリー。予約しようかな…と思いつつ「これは店頭に並ぶ」と担当さんがおっしゃったので、それでは見てから決めようということで予約はなしに。小物好きなので、こういうアイテムはとても気になります。さっと巻いたり、コサージュやアクセと組み合わせたら絶対かわいいと思う。ただ、秋冬というよりは春夏向けのアイテムかもしれませんね。

まだまだ書き足りないしカタログ全体をフォローしているわけでもないけれど、私の気になったアイテムはこんな感じでしょうか。全体として見ると不満はあるけれど、自分の好み基準ですごくヒットするアイテムが見つかったのでこれはこれでよしかな。あとは入荷が乱れずに、きちんと予定通りになってくれることを祈るばかりです。


6月26日

GPSアサインがようやく発表されました。フィギュアファンのオフシーズンの一番の楽しみはこのアサインの発表かもしれないなと思います。見たところ女子はスケアメ、男子はスケカナが面白そうな(つまり激戦ということ)組み合わせですね。そしてNHK杯で高橋・織田・小塚と日本男子のスリートップをぶつけてくるのはちょっと複雑…。直接対決は全日本選手権まで避けてほしかったなぁ。修論を抱えている私はさすがにフィギュア観戦している場合ではなく東京ワールドまでは生観戦はお休みだから「他人事だわ〜」と気楽な気分でアサインを眺めていたのですが………私ここでとんでもないものを見てしまいました。NHK杯のエントリーにパトリック・チャンの名前が入ってる!!ええっ、パトリック今年はGPSに出るの?てかNHK杯って日本じゃん!生パトリックが見れるの?うわぁどうしようどうしよう、全く予想外だよどうしよう…と完全にパニックになっています(笑)。日本と言っても長野だし、期間は11月30日〜12月3日と激ヤバな時期だし、もしSPとFSを見るなら一泊しないとだめだからお金がかかるし……と否定的な要素を次々に頭に描き出してみるものの、こんなチャンスを逃してたまるかという気持ちが本音だったり。さぁて、どうしましょうか。日帰り計画で一日だけ出かけるか、それともなんとか理性で出かけるのを抑えることができるのか。しかしこんなチャンスは滅多にないので、欲望に抗わずに素直に出かけた方がいいのだろうなと思っていたりします。JOのGALAみたいな、悲しい思いをするのはもうこりごり。私は、好きなものを好きなように追いかけている馬鹿で無計画な自分が結構好きなのです。パトリックはおいしすぎるよ、絶対見たいよー。と12月の遠征をほんのり頭の中に入れつつ、スケジュール調整をし出した私です。ほんとに馬鹿だわ。

私は基本的にルックスには興味がないのであまり容姿がどうのこうの思うことはないのですが、パトリック・チャンの顔は本当に好きです。なんでこんなにパトリックの顔が好きなんだろうとずっと疑問だったのだけれど、今日その解を得た気がします。彼は、鳩山郁子さんの描く黒髪少年の顔の雰囲気に通じるところがあるのです。リンクから降りるとかわいい少年だけど、氷上では別人で特に演技前や演技終了後の表情にアジアン男子特有の鋭さと美しさがあってはっとさせられます。色が白くて端正で、15歳とは思えないほど大人びた表情で滑るパトリック。現在15歳の彼は、あやうい少年性という何とも魅力的で不安定な境界線の上に立っていて、だからこそ私は現在の彼に惹かれているのだと思います。きっと将来はかっこいい男性になるだろうけど、現在の雰囲気も捨て難いなぁ。それが一瞬で通り過ぎる、幻のような時期だというのは判っているのだけれど。それでも尚、もう少しこの少年性を眺めていたいと思うのです。もちろん、スケートの才能に期待しているからこそこうして容姿に萌えれるわけで、何よりまずスケートありきです。スケートの面でも、これからが楽しみですね。ちなみにパトリックは、おじいちゃんコーチという別な萌えツボがあったりします。パトリックのコーチ(名前がよくわからないのですがオズボンかな?)はなんと90歳なのです。90歳で現役コーチってすごすぎますよね。おまけにとってもお洒落で、キスクラでは毎度派手な服に帽子、眼鏡とこれまた90歳とは思えないかわいい雰囲気で座っているのがもうたまりません。パトリックなんて曾孫みたいなもんですよね、年齢を考えると。それにしてもバンクーバーの時は94歳ですか。個人的にパトリックとおじいちゃんコーチのコンビが大好きだし二人でバンクーバーを目指してほしいので、長生きして指導を続けてほしいなと思っています。交通事故で怪我をして入院したというのは知っているのですが、それ以降は大丈夫なんでしょうかおじいちゃんコーチ。とても心配です。


6月27日

初無花果。なぜだか無花果は好きで、毎年夏から秋にかけて頻繁に購入しては食べている。今年もまた、この季節がやってきた。

高柳誠の詩集『卵宇宙・水晶宮・博物誌』を購入。以前必死で探していた時は見つけることができなくて、でも先日ふと出会ってしまった。探し物は、忘れた頃に出てくるものらしい。ようやく購入することができてうれしいです。この詩集についてはまた明日にでも。

Plastic Treeのニューアルバム『シャンデリア』(通常盤と限定盤、両方買っちゃった。二枚買いなんて初めてだよ。ああ、私はどんどんダメになっていく)、そしてThe Velvet Teenのニューアルバム『カム・ラウド』を購入。プラの方は、気に入りました。久しぶりに、わだかまりなく「好き」と思えるアルバム。『シロクロニクル』や『cell.』はもちろん好きな曲もあったけど、全体として見ればもやもや感があったし。「好きなバンドが発表する音源だ、嫌いなわけがあろうか。好きに決まっている」と半分自己暗示をかけながら好きになろうとしていた部分が正直ありました。でも今回はそんな無駄なあがきをするまでもなくいいなと思ったし好きです。確かにもう、昔のプラではない。でも現在のプラの音楽性はこういうものであり、こうした方向性のなかで非常に面白く刺激的なアルバムを作った…と私は思っています。久しぶりのアルバムは、期待と同時にある意味ものすごく恐怖でもありました。でも、私は今回の作品は納得です。大絶賛、傑作!とまでは思えないけれど、力作だし手応えを感じました。聴き終わった後でも、「ラストワルツ」のサビのメロディーがゆらゆらと頭の中を漂っています。「何度でも やさしい夢だけ 貴方は見てていいよ 踊ろうよ 千切れないように 手をとり ラストワルツ」

で、The Velvet Teenの方なんですが……逆にこちらはピンときません。まだ聴き込んでいないからかもしれないけど、うーん、どうなんだろう。「Out of the Fierce Parade」も、これとは音楽性がかなり変わった「Elysium」もどちらもものすごく気に入ったのにな。明日はちょっとプラをお休みして『カム・ラウド』をもう少し聴いてみようと思っています。


6月29日

昨日は世田谷パブリックシアターでロベール・ルパージュの「アンデルセン・プロジェクト」を観てきました。感想はまたのちほど。やることがいろいろとあって、睡眠時間が2時間半しか取れなかったから現在撃沈寸前です。久しぶりの演劇鑑賞は、とても素晴らしいものでした。あの熱病のように舞台通いをしていた数年のことをふと思い出しました。さすがにあそこまでにはなれないけど、もう少し演劇関係にアンテナを張っておいて、気になる公演の時は出かけるようにしたいものです。まだまだ遊びの予定はたくさんあって、7月2日のプライヴ、11日のAPOGEE、17日の維新派などなど7月はイベント続きです。夏バテなんてしてられないね。

竹宮惠子『ロンド・カプリチオーソ』(全2巻)を購入。フィギュアスケートをテーマにした漫画。竹宮惠子を集中的に読んでいたのは10代の頃だが(今でも好きだしたまに読み返す。やっぱり彼女は私の中の大切な漫画家)、その当時はフィギュアに全く興味がなかったのでこの作品は手に取らなかった。そして結局そのまま縁がなくずっと読まずに今に至ったのだが、今更のフィギュア熱復活(というか大爆発)によって俄に「読まなきゃ」という気分になりネットで探して注文した。先ほど手元に届いたのだが、内容が結構ヘヴィなのでもう少し落ち着いた頃に読もうととりあえず寝かせている。内容としては天才的なスケートの才能を持つ兄弟アルベルとニコルの愛憎劇…という感じなのか?秀才型の兄、天才型の弟。そのことに気付いて、苦悩する兄側の視点がメインになるらしい…というのがパラパラめくってみた感触(実際に読めばまた違うかもしれない)。それにしても秀才型の兄と天才型の弟の間の溝というのは何やら耳の痛い話しで、おほほ。凡庸さを努力でカバーしている人間にとって、天性の才能というのは手を伸ばしても届かないものだし、その眩しさが妬ましかったりするのよねとしみじみ思います。自覚症状がない方が実は幸せなんだと思う。現実に気付いたその瞬間が、苦悩の始まり。

「ロンド・カプリチオーソ」というタイトルから、私は真っ先にアメリカのスケータージョニー・ウィアーの滑った「ロンド・カプリチオーソ」を思い出してしまう。「ロンド・カプリチオーソ」は、彼の2004-2005シーズンのSP。そのうち、ジョニーに関するテキストもまとめたいと思う。男性でありながら優美で美しい演技で観客を魅了するジョニーは、竹宮惠子の漫画に出てきそうな存在かもしれない。オフアイスでの毒舌っぷりは演技と対照的だけど(笑)。ジョニーは7月15日から新横浜で開催される「ドリーム・オン・アイス」で来日するんですよねー。さすがにこれには行かないけど(というかスケジュールの都合上行けないというのが正しい言い方)。ジョニーに会えるのは、来年の世界選手権かな。

 

 

 

 

back -- index -- next