★
★
★ |
★
★ |
★12月16日★ ★先日『ブルーノ・シュルツ全小説』を買った時、一緒に長野まゆみの『天球儀文庫』(河出文庫)も買ってしまった。作品社から出版されたもともとの版の本を持っているので文庫化されたものはいらないと思ってずっと買わなかったけど、手軽に読み直せるのもいいかなと思い直して結局購入。読み直すのはまた後でやるとして、とりあえずあとがき文に目を通す。なんというか本人の言いたいことはわかるのだけど、あの現実の風景を昇華した美しい異空間は、時代の空気から作り出されたものなのかなあと思ってしまう。「20世紀(90年代)と今では幻想の質が違うから、昔のような作品を書かなくなったのも必然」的な言い方をされてもなあ。物書きだから時代の気分とは無縁ではいられないというのはわかるけど、だからといってそれを作品に素直に反映させなくてもいいと私は思っている。それは、私がこの世界から離脱したいといつも思っている人だからなのか?現実を見据えつつ、別の世界を作り上げる手法もありなのに。それが小説なら、なおのことそうではないのか。本人の関心が変わったり、作風が変化するのは別に構わない。しかし時代の空気がどうのこうの…という言い方をされるのは正直に言って、あまりうれしいものではない。でももう、二度と昔には戻らないということがわかりきっているから、今更こういうのを読んでも何とも思わない。今後長野まゆみの新作に夢中になることはないだろうから。それは本当に、悲しいことなのだけど。 パラパラと本文をめくってみたのだが、文庫化されているのは文章だけで、もともとの版に入っている鳩山郁子さんの挿絵がないのは個人的に非常に物足りない。あの作品は、私にとっては文章も挿絵も半々の重みを持つもので、両方が揃っているからこそより素晴らしい作品となったのだから。鳩山さんの描く少年の顔があまり好みではない(特に宵里)のは多少のマイナスではあるけれど、人間も小物も等しくオブジェと化し、世界観を構成するパーツとなっている硬質な挿絵は素晴らしい仕事だったと思う。また造本も素敵で、「天球儀文庫」という名前にふさわしい造りと大絶賛したいシリーズだったのだ。それがこう、あっさり文章だけ文庫になってもね…。結局何度も何度も手に取ることになるのは、もともと所有している作品社版になるだろう。 ★12月17日★ ★この頃睡眠時間3、4時間で朝から晩まで用事に追われて家に帰らない生活をしている。さすがに疲れてきているのだけど、今回ばかりは限界を超えたのかむしろ日々ハイになっている。すべてが終了した時のことが怖い。きっとがくっと体調を崩して寝込むに違いない。困ったなあ、年末まで予定がびっしり詰まっているからこの後に寝込む暇なんてないよ。 ★注文していたThe Velvet Teenの『Secrets Safe, A Buried Box』が届いたのでさっそく聴いてみた。The Velvet Teenは惚れたバンドの音源はすぐに一気買いする私には珍しく、とてもスローペースでアルバムを一枚一枚買い集めていった。なぜなのか、自分でもよくわからない。ひょっとすると買うのが惜しかったのかもしれない。音源が、数枚しかなかったから。でも次の一枚を買うと、「もっと早く買っておけばよかった」と後悔したから、この方法がよかったとはあまり思えない。 『Secrets Safe, A Buried Box』は来日記念に日本のためだけに作られた寄せ集めアルバムなので(寄せ集めという言葉は悪いが、入手困難なシングル曲や未発表作品を収録しているのでファン的にはとてもおいしい)、全体として見れば『Out Of The Fierce Parade』や『Elysium』には到底かなわない。しかし最初の曲「Stay With Me」が私は大好きで大好きで、この一曲のために買ってよかったと思ったほどだ。ある意味静と動の振り幅が激しい曲で、私はきっとこの落差が好きなのだと思う。一番好きなのは、ちぎれる寸前の細い糸のような裏声で、「置いていかないで」(歌詞は英語)と歌う部分。歌詞の言葉は非常に平凡…というかシンプルすぎるほど単純だと思うが、なぜこうも感情を揺さぶられるのか。それは絶対、ジュダのあの声がたまらなく好きだからだろう。体が浮遊する。もっと高いところへ引っ張られそうになる。ちぎれる寸前まで、張りつめた高みを漂いながら歌うような声。そしてその「静」のあと、感情が爆発する。The Velvet Teenというバンドの持つ、ナイーブな繊細さが私はとても好きです。でも単にナイーブだけじゃなくて、とても強固だとも思う。それは『Elysium』を聴いていて感じる。去年の来日公演に行かなかったことを、私は非常に後悔しています。来年でも、また東京に来てくれたらいいな。 ★大学で開催された印刷博物館による講演会「印刷文化を考えよう」に出かけてきた。講演内容は樺山紘一「印刷文化史ことはじめ」、西野嘉章「アヴァンギャルド雑誌の文化論」、田中優子「江戸の出版文化と印刷」。三者とも大変面白い講演だったし、人の入りも多く、普段授業を聴きに行っている文化資源の大教室がびっしり人で埋まるほど大盛況だった。 ★12月19日★ ★Plastic Treeの年末公演のチケが、ようやく届いた。今年最初のライヴはプラ。今年最後のライヴもプラ。結局、今年も海月でプラ三昧な一年。とはいうものの個人的にはかなり不安定な一年で、「もうダメかなあ。今のプラは自分にとっては絶対的な存在ではないのかも…」と何度か疑ってしまったほど、気持ちに浮き沈みがあった。事務所の件、夏ツアーの件、発売される音源が前ほど魅力的とは思えなくなった等々、さらに自分の精神的なこともあって心底素直に活動を応援できていたのか、かなり疑問が残る。実は文句を言っていたことの方が多かったのではないか。改めて振り返ってみると、その事実に気づいて愕然とした。今年は「プラファンとしての自分」という観点から見れば、暗黒の一年だったのかもしれない。 12月16日に、三ヶ月連続シングルリリースのファイナル『空中ブランコ』が発売された。この曲は発売前から期待していたものだったが(その分不安もあった)、実際に買って聴いてみて予想を裏切らない素晴らしい出来で、本当に大好きだと嘘偽りなく心の底から言える、久しぶりのシングルだった。いろいろあった一年だけど、最後にこんな曲を出してくれたのだから、もうそれだけでいい。そう思えるほど、この曲の世界にはまり込んでしまった。またこの曲は、PVが素晴らしい出来になっている。itvで見ることができるので、一応リンクを貼っておく(12月14日放送分)。ただこれはインタビュー込みの番組で、PVは開始後10分くらいからスタートする。頭出しがやりにくい番組ではあるけど、興味があればぜひ見てほしい。PVのテイストとしては、初期の傑作「トレモロ」に近い。しかしトレモロがおもちゃ箱のように楽しいパペットショウ、ストーリー性の強い物語だとすれば、空中ブランコは多層的なイメージシーンが繋ぎ合わされていて、もっと拡散している。だからこそ、幻想的なサーカスのイメージが頭にゆらゆら残って忘れられないのだが。物悲しくて、寂しくて、そしてとても美しい。私の大好きなサラ・ムーンの『CIRCUS』の世界に重なるものがあると思う。PVに関してはプラ日誌の方でたくさん語る予定なので、こちらではごく簡単に。仮面をつけたメンバー、火を吹く男、サーカステントの中、もがれた翼…。こうした映像に太朗さんの沈む声とバンドの音が重なる。たぶん、Plastic Treeが昔から得意にしていたタイプの世界観。でも単なる過去の焼き直しではなく、今のPlastic Treeの姿や音がここにはある。この曲をライヴで聴くのが本当に楽しみです。 ★12月20日★ ★相田裕『ガンスリンガー・ガール』の6巻を読む。うーん、6巻はイマイチ…。あと友達にアニメの『蟲師』を数話DVDに焼いていただきました。のちほどゆっくり見ようと思っています。これからの楽しみができました。 授業はほとんど終わっているのだけどどうしようもなくバタバタしていて、年内に予定していたスケジュールをどれだけ消化できるのか心配です。このままでは、泥沼の一年で終わってしまう…。 ★12月21日★ ★弥生美術館へ出かけて「こどもパラダイス展」を見る。1920-30年代のこども雑誌の特集。大正デモクラシー、ハイカラ文化、モダニズム等々、私の好きな要素がぎゅっと詰まった展覧会。武井武雄、初山滋、深沢省三、岡本帰一、村山知義、竹久夢二など多数の童画家の作品が展示されていたが、私はやはり武井武雄が一番好きだ。あのデフォルメ、構図、そして色彩感覚。村山知義については全然詳しくなくて、前衛芸術の人・マヴォの人という意識しか持っていなかったので、こういった童画を描いているのが意外だった。ただ経歴を読むと童話作家と結婚していたので、納得したが…。村山知義の作品もなかなか好みだった。紙の余白が印象に残る、ユーモラスな画風。子供の雑誌に関してはあまり知らなかったのだが、『赤い鳥』をはじめ『金の船』『コドモノクニ』など雑誌別のコーナーがあって詳しく説明してあったのでいろいろと勉強になった。この展覧会に合わせて発売された河出書房新社の本『子どもパラダイス』も資料として購入。こういうのに刺激されると、久しぶりに画像作りをやりたくなりますね。レトロでかわいい画像を作りたいな。 ★12月23日★ ★あまりに忙しくて、早くもダウンぎみなこの頃です。疲れて疲れて、やらなければいけないことをこなせそうにありません。お先真っ暗…。今日はガンダム展に行きました。今年一年間のいろいろなものが最後になってどばっと襲いかかってきていてあんまりいい調子じゃなかったりするのですが、とりあえず最後まで頑張ります。 ★12月24日★ ★スパンアートギャラリーにて「桑原弘明展ーSCOPEー」を見る。桑原弘明の個展に行くのは何度目だろう。回数を重ねても初めて見た時のように胸が締め付けられる、あの箱庭。小さなスコープを覗き込めば、光によって鮮やかに光景が変わる不思議な世界が広がっている。今年の作品では、三鷹の国立天文台をイメージした「遠い星」、あとはタルコフスキーの「ノスタルジア」をモチーフにしたその名も「ノスタルジア」という作品がとても好きだった。ギャラリーで、『スコープ少年の不思議な旅』(パロル舎)を購入する。素晴らしい本です。まさに桑原弘明の世界を堪能できる一冊。ぜひぜひ、手に取ってみてください。 ★HMVでBUCK-TICKの『13th FLOOR WITH DINA』(初回限定版)を購入。結局ライヴには行けなかったので、せめてDVDだけでもと思って買ってみた。年賀状を作りながら横目で流し見ていたのだが、凄まじいセットだこと。これは生で見たら、さぞかし素晴らしかっただろう。ゴシックやキャバレーをイメージしたアルバム「十三階は月光」そのままの世界を具現化している。ちなみに年賀状は今年も結局力作とは言い難いものに。本当にすみません。あと去年もそうだったのですが、印刷が汚過ぎ。。来年は絶対プリンターを買い替えないと。もうさすがに限界です。裏が汚れるのって最低だわ。 ★12月26日★ ★一杯一杯すぎて、日記すらろくに書けない毎日です。年末は忙しい…。とりあえず、最近のポイントだけ。昨日は新居昭乃さんのライヴへ行ってきました。レメディオス・バロの作品集『予期せぬさすらい』(リブロポート)を古本で購入。『ふたつのスピカ』の9巻を読む。などなどでしょうか。昭乃さんのライヴについては後日追加。 ★12月27日★ ★最近また鉱石をちょこちょこ買っています。ミネラルコレクションは、ある意味ライフワークに近い。蒐集すること、展示すること、幻想を生み出すこと。この方法論はずっと変わっていない。あとプラネタリウム特集の「大人の科学」も今さらながら購入。結局今年はホームスター、買えなかったな。来年買いたいものの筆頭です。迷った時は、原点に立ち戻るのが一番なのかもしれない。最近本もよく買っています。自分がこうも劣化しているのは、やはり本を読まなかったのが悪いのでしょうね。また一から、やり直し。ようやっと、自分の中で勉強をする環境を作ることができました。これを作り上げるのに一年ですよ。ほんとにもう、なんで私はこんなにとろいの。 明日はジェーンで春物のカタログを見てからプラのライヴへ。さて、一体どんな一日になるのやら。 ★12月29日★ ★明日から札幌に帰省します。なのでいつも通り、日記の更新はプラ日誌の方から行います。なんというか、最後の方に猛烈に予定を詰め込んだせいか、とてもとても疲れてしまって。他にも思うところがたくさんありすぎて、ぐったりしています。最後はきちんと終わらせたかったのに、むしろ放り出すような感じで諦めてしまいました。散らかしたまま終わる2005年。うーん、こんなはずではなかったのに。そんなこんなで、明日の朝に東京を離れます。まだ荷造りなんもしてないんですけど。。助けて…。 それでは少し早いですが、みなさま、どうぞよいお年を!来年はNEW ATLANTISもそして私も、パワーアップしたいなと思っています。 |
★
★ |
★
★
★ |