『全宇宙誌』 工作舎
本全体が漆黒で、そこに散りばめられた文字や図像がコスモスを形成している。どこまで文字でどこまでが図版なのか、どこからが星屑なのか・・。杉浦康平によるデザインが秀逸。初期工作舎本の傑作で、私は内心この本の出版された79年に生まれたことをうれしく思っている。高値で取り引きされている本だけど、ぜひ一度見て欲しい一冊。ちなみに私はカバーなしとはいえ、『全宇宙誌』を2500円で見つけて周囲に自慢しまくりました。

            


『宙ノ名前』 林完次 光琳社出版
私の原風景でとても懐かしい本。この本を初めて見た時、帯の「見上ゲテ御覧、夜ノ宙ヲ」ではじまる言葉に導かれるように手に取った。本が発売された直後に買ったので、私が持っているのは初版。当時はこんなにこの本がブームになるとは思わなかった。美しい夜空の歳事記は何度見ても飽きない。光琳社出版は倒産したが、角川書店から再版された。ただ私は光琳社出版の方がデザインがよいと思う。

            


『空の名前』 高橋健司 光琳社出版
夜の空の方が好きだが、こちらの本も持っている。この本を読むと、雲のかたちや風、四季の移り変わりに敏感になれるような気がする。世界のささやかな美しさが目に入ってくるような気がする。毎日過ぎゆく日常の中には、こんなに豊かな四季の言葉が眠っている。美しい日本の言葉を大切にしていきたいと思わせる一冊。

            


『月の本』 光琳社出版
月は不思議。都会の夜のビルと空。ビルの狭間に見えるあの白い月。白銅貨の月が今夜も私を見つめる。丸ごと一冊月のこの本。個人的には高山宏「月の図像学」がとても好き。

            


『ルナティックス』 松岡正剛 作品社
サブタイトルは「月を遊学する」。これは科学的というよりは、文学的な月の百科辞典。内容も濃いし、図版もたくさんあって楽しい。西洋に偏ることなく、日本文学や短歌まで大いに語っている、読みごたえたっぷりの一冊。90年代の松岡本のなかではかなりお気に入りです。

            


『星の地図館』 小学館
とてもすばらしい星のビジュアルブック。ちょっと大きくて持ちにくいのだけど、そのぶんとてもきれいだ。これを眺めているとお金のない中学生のころ、雑誌『ニュートン』などを切り抜いて、部屋の壁に貼っていたことを思い出す。夜寝るとき、それを眺めて宇宙のことを考えていた。自分の日常よりも、生活よりも、星やジュラ紀の方が親しかった。そんな時代はもう、過ぎ去ってしまったようだ。結果的によかったのだけど、どこか寂しく感じる部分もある。

            


『空の色と光の図鑑』 草思社
太陽柱やダイアモンドダスト、幻日などさまざまな空の現象を写真や図で説明している本。小学校の理科の教科書を眺めているような懐かしさ。 ぼーっと空を眺めているのもよいですが、現象の仕組みがわかるともっと楽しめるかもしれません。

            


『宮沢賢治 星の図誌』 斉藤文一・藤井旭 平凡社
宮沢賢治の童話や小説、または詩に出てくる星や星座について、作品共々細かく分析したとてもおもしろい本。賢治の作品に親しんでいる人の方がよりいっそう楽しめるでしょうが(内容はとても読みごたえあり)、あまり知らない人でもきれいな写真を楽しむことができる。あくまで「宮沢賢治」をキーポイントにして天文に切り込んでいるけど、賢治は膨大な知識やイメージを作品の中に埋め込んでいるので、結局この本は宇宙全体を俯瞰するような造りとなっている。

            


『FULL MOON』 新潮社
アポロ宇宙飛行士が目撃した月の写真集です。帯には立花隆の「おもわず目をむいた」という言葉が載っている。私は目をむいたという感想とは異なるが、それでも意識にすごい衝撃を受けた。ものすごくインパクトのある写真集。月世界のファンタジーではなく、月面の本当の現実を見せつけられる感じがする。リアルで、静かで、怖い。この写真集を眺めていると立花隆の『宇宙からの帰還』や日野啓三の『光』を思い出す。こういう世界に降り立ったら、確かに意識の変容はありうると思う。

            


『星三百六十五夜 冬』 野尻抱影 中公文庫BIBLO 
稲垣足穂と並ぶ、星の巨人。足穂は10代の頃から読んでいたのに対し、抱影はごく最近この文庫のシリーズが発売されてから読み出した。このシリーズの中では今のところ一番のお気に入りはこの冬の本で、絢爛たる冬の夜空に対する野尻抱影の想いが伝わってくる一冊。オリオン、昂、シリウス、アルデバラン・・。この薄い本を開くと、冴え渡った冬の夜空が目の前に開けるよう。本の装丁も素敵。

            


『ウは宇宙船のウ』 レイ・ブラッドベリ 創元SF文庫
最初に読んだブラッドベリの本で、今でも一番好きな一冊。この短編集のなかの作品はどれも好き。宇宙への憧れ。ロケットを見上げる少年たち。私がずっと欲しくて、でも結局遠くなってしまった夢がここにはある。すべての少年たちに、そして大人たちに捧げたい一冊。

            


『万華鏡』 レイ・ブラッドベリ サンリオSF文庫
「kaleidoscope」という言葉が本当に好きで、実際の万華鏡も好きで、そしてこの素敵な小説に出会えた。表題にもなっている短編「万華鏡」は忘れられない作品。爆発した宇宙船、投げ出されて漂流をはじめる乗組員。深宇宙への漂流、死への漂流。万華鏡のような流星群の中へ落ちて、そして燃え尽きて死んでいく。彼らの交わす言葉もまた万華鏡のフラグメント、そして流星のように美しい。悲しいけれど、美しいイメージを残して飛び去っていく小説。そう、まるであの青いほうき星のように。実際の宇宙での死はこんなに美しいものではないとはわかっているが、人の一生の終わりがこんなに美しくせつないものであったならばと思ってしまう一冊。

            


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